東京の匠の技

洋裁(婦人服・子供服)

一般社団法人 日本洋装協会会長

中田眞理さん

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協会の書棚に数冊の古いノートが残されている。年を経て色あせた紙面には、手書きの端正な文字と丁寧に描き起こされた洋裁技法の図解が整然と並ぶ。ノートの持ち主自らが洋裁を学んだ際に書き記した勉強ノート。一目すれば、持ち主の洋服づくりにかける熱い想いと真摯な姿勢が伝わってくる。そして、協会の技術向上と人材育成に尽力した“カシミヤコートの山本”こと、「山本やい子」。その卓越した裁縫技術を惜しみなく公開し、人材育成に尽力、第一人者として洋装業界を牽引する立役者にして、日本洋装協会の「中興の祖」である。 この国の黎明期における洋服づくりへの情熱と積み上げた技術の重み、そして人材育成。すべては洋裁を学ぶ者たちに託された想いであり、同じ道を志す者の宝として受け継がれている。

洋装技術の向上と普及

洋装技術の向上と洋装普及を図り、婦人服装文化の発展に寄与するため、昭和22年4月に創立された日本洋装協会。和裁は生地を平面に仕立て、着付けに重きを置くが、洋裁は着る人の体型に合わせて型紙を作り、立体的に仕立てていく。その技術は、口伝によってすべてを体得できるものではない。“ダーツ”をはじめ、“くせとり”といったアイロン掛けの動き、衿の形を指の動きによる微細な感覚で作っていく“八刺(はざし)”などの技法は、自らの手を動かし、感覚によって覚えていくしかない。
「 “やって見せ、言って聞かせて、やらせて見せ、褒めてやらねば、人は育たぬ”と言われますが、それが技能伝承・人材育成の基本だと思います。」

平面から立体へ

サイズを測り型紙を作成し、その通りにしても、きちんとしたものが縫えるわけではない。 「ベテランになると、初めてのお客様でも体型を見て特徴を掴み、採寸して型紙を作成する際には、その特徴を頭に描きながら、線に微細な修正を加えます。」 人間の体は左右非対称であり、左右の肩下がり、肩甲骨の張り方も違いがある。 「体の微妙な差異を補正しながら、その人が着た時に、いかにきれいで着やすいものにするか。体を包み込むような柔らかい線を出しながら、着崩れすることなく、しっかりフィットしていて、動きやすさや立ち姿の美しさ、佇まい、そうしたものを総合的に表現するのが、洋裁の技術・技です。」
多様な種類と特徴がある生地を扱いながら、その生地をどういう状態で縫えば、きれいに見えるか。その特徴を生かしながら、着る人の個性を引き出すのが仕事。
「生地の風合いによって、縫い方や糸の引き具合も異なるので、数をこなしながら、生地の特徴や糸の調子などを手で覚えていくことが大切です。」

服づくりは、人との関わりから生まれるもの

1級技能士を取得したとしても、そこに“今の時代の要素を取り入れていかなければ、すぐに輝きを失い、古びたものになる。
「人が着るものだけに、今の時代を生きる人の服を手掛け、経験を重ねることで、生きた技能が身についていきます。」
服づくりを通じて、その人の人生に関わりながら、満足していただくために、着やすく美しい服を作る、それが仕事。
「お客様に、すごく着やすくていいわ、と満足していただき、その服を好きになっていただけるのが一番。服を介して関わったお客様、その一人ひとりに育てられています。」
服づくりは、人と人の関わりから生まれるものであり、そこに気持ちを込めるものである。

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#お問い合わせ先

一般社団法人 日本洋装協会
〒113-0034 東京都文京区湯島4-8-3-307
電話番号:03-3814-7023
公式ホームページ:http://nihonyousou.or.jp

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