東京の匠の技

木工塗装

東京木工塗装技能士会

金子雅一さん

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木は、一様ではない。針葉樹、紅葉樹、同じ種類でも取れた場所や陽の当たり具合など、育った環境で変わる。陽当たりが悪ければ、目が詰んで硬めになり、日向なら細胞が活性化して年輪が大きくなり、柔らかくなる。木の性質を知り、木目を見て塗りを調整し、素材感を生かした上で表面を保護し色付けするのが、木工塗装である。その作業は、決して一律ではない。繊細な見立てと加減があり、そこに技がある。

木工塗装の始まり

木工塗装の始まりは、明治期。近代化に伴い、時の政府が西洋家具を輸入、横浜港から鉄道で新橋の芝区まで運んだ。当時の汽車は振動が激しく、西洋家具の特徴であるS字型の猫脚が破損、その修繕のため、芝地区には家具屋と椅子屋が集められたという。だが、家具は直せても、塗ることはできない。そこで、塗りの技法に長けていた漆屋に任せることとなり、それが洋風家具を手がける木工塗装の端緒となった。木工塗装が“塗師屋(ぬしや)”と呼ばれるのは、漆を塗る職人を“塗師”というからであり、「塗師屋」が、数ある塗装の中でも高度な技術と感性が求められるのも、螺鈿、沈金、蒔絵といった高度な技法を持つ漆塗りに通じる部分が大きいからといえる。

磨くことが、特徴

漆塗りでは、下地に麻布を被せ、生地がなくなるくらいまで平らにしごき、そこに漆と砥粉を練り合わせたものをパテとして表面に塗る。
「同じように木工塗装では、寒冷紗(かんれいしゃ)という綿布を下地に貼り、上から塗料を塗り重ねます。最終的に黒を塗り、その上に透明なクリア層を塗り重ね、そこに磨きをかけます。螺鈿や蒔絵の場合は、黒塗装の上にのせ、研磨することで平らにします。」
この「磨く」という工程があるのが、木工塗装の大きな特徴だろう。
「例えば、大理石などの石材にも塗装可能です。天然の石は表面に凹凸がありますが、そこに塗料の層を重ね、そこを削ることで平らし、磨き上げます。つまり、表面を埋める工程があることで、どんなものでも塗れます。こうしたことは、ペンキ塗装ではできません。もちろん、ペンキ塗装でもパテで埋めることはしますが、“磨く”という工程はありません。」

木を知る

木を知らなければ、仕事はできない。
「木材の性質によって塗り方が変わります。柔らかい木の場合は、吸い込みが激しく、刷毛を置いただけで色が染み込み、濃くなる。つまり色斑になります。木を見て、水性か油性か、材質に応じた塗料を選びます。」 曾祖父が明治に創業し、4代目。技を受け継ぎながらも、新しい塗料や道具を試し、自分に合うよう調整する。
「どんなものを使ってもできるのがプロ。限られた道具でも、それを自分なりに変えてできるようにする。道具も含めて技術です。」
その技を使って、人から喜ばれる塗装をめざす。
「天然の木材の温かみを人が求める限り、木の文化はなくならない。木製の家具に好みの色をのせ、予想以上の色合いに仕上げ、古い家具でも、素材を生かしながら、20〜30年前の購入した当時の思い出が蘇るようなものに仕上げることもできる。家具に付加価値をつけるのが、私たちの仕事です。」
技があるからこそ、生かせるものがある。

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〒121-0061 東京都足立区花畑4-32-10
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