東京都では、年に一度、都内に勤務する技能者の中から極めて優れた技能を持ち、他の技能者の模範と認められる方々を「東京都優秀技能者(東京マイスター)」に認定し、東京都知事賞を贈呈しています。今回は、令和6年度に建築とび工の職種で東京マイスターに認定された宮本祐治さん(株式会社 鈴木組)にお話を伺いました。
祖父の代からの鳶(とび)として
この世界に足を踏み入れて、24年になります。祖父の代からのとびで、父もとびの会社を営んでいました。大学時代は、施工管理の道に進もうと考えていましたが、アルバイトで父の仕事を手伝っている時に、現場監督の仕事を見ていて、施工管理よりもとびの仕事の方が自分には向いていると感じ、卒業後、父の会社に就職しました。その後、父が会社をたたむことになり、江戸時代から続く鈴木組に入りました。長い歴史を持つ当社には、東京マイスターをはじめ、建設マスター、叙勲などを受けている先輩が数多くおり、今回の受賞によって、少しでも先輩方に近づくことができて嬉しく思っています。
多岐にわたる仕事
とびの仕事は、現場の仮囲いや作業のための足場を組む仮設工事、タワークレーンの組立・解体工事、建物の鉄骨を組む鉄骨建方工事、躯体のコンクリートの打設工事など多岐にわたります。“現場はとびで始まり、とびで終わる”といわれるように、工事の最初から最後まで、さまざまなかたちで関わるため、技能を身につけるのに時間がかかります。一つ一つの作業だけを覚えても、現場の流れは理解できません。仮囲いをかけるところから、基礎を造り、鉄骨を立て、最後の解体まで一貫した作業を経験することが重要です。大切なのは、自分からいろいろなことに挑戦すること。先輩の仕事をよく見て、いいところを学び、自分なりにアレンジする。私もそうやって先輩たちに追いつくために休憩時間も惜しまず、仕事を覚えることに専念しました。人の動きをよく観察している人は、覚えが早い。そういう人は伸びます。
良い足場とは
足場を組むこと自体は単純作業です。でも、どうすれば使いやすくなるか、そこを工夫することで、現場の作業は変わります。物を置く広さが確保されていない、アルミの足場板だと軽く扱い易いが強度が足りない、仕上げ部分に足場が干渉するなど、細かい問題が影響し、そこで作業が滞留する。全体の流れがスムーズに動いているかどうかは目で見てわかります。足場が使いやすいと作業がはかどり、工程が短縮され、次の業者が余裕を持って現場に入ることができる。その余裕が安全につながるのです。まずは現場の人の声や意見を聞き、コミュニケーションを取りながら、どういう作業をするのか、作業しやすい高さはどれくらいか、どんなものを運ぶのか、どうしたら安全にできるのか、現場から集めた情報を取り入れていくことが、安全で使いやすい足場づくりにつながります。
現場のために力を尽くす
同じ足場でも、現場の環境や建物の形状によってまったく違うものになります。同じ足場は二つとありません。地面が常に平行とは限らないので、段差が生じる場所では、手すりやネットなどの安全設備を設置します。作業する人の使い勝手や安全性も含めて、足場の組み方を一任されているのがとびです。鉄骨の建方も、事前の計画が重要ですが、図面通りにいかない場合もあるので、現場の状況に応じて臨機応変に対応する。経験を積むほど、現場で的確に対応するための引き出しは増えます。仕事の進め方を決め、現場が思い通りに流れた時の達成感は大きい。もちろん失敗もありますが、そこから次につながる改善点も見えてきます。成功した時の達成感をみんなで分かち合えるのも、この仕事の面白さです。
人の安全を守る仕事
自分としては、まだまだ不完全なところがたくさんあるので、自身の学び、研鑽に努めるのはもちろん、経験してきたこと、学んだことを後進の指導・育成に活かしていきたいと思います。建設業界も日進月歩。人の安全を守る仕事なので、新しいことを常に取り入れながら、さらに仕事の質を高めていきたい。現場が終わり、足場を解体し終え、完成した建物を見上げる時の気分は格別です。自分が手がけたものが形になって残るところ、それが醍醐味であり、想像以上に大きなやりがいを感じる仕事です。みんなの役に立っていることを日々実感できると思います。
企業名 | 株式会社 鈴木組 |
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所在地 | 東京都文京区千駄木3-43-3 ATK千駄木ビル2階 |
連絡先 | TEL:03-3822-1785 |
主な業務内容 | 建設工事鳶工事/土工事/物流工事/養生・クリーニング工事/斫り/杭頭処理/内外装解体工事 |
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