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思い出が刻まれた時計に、 再び輝きを与える、メンテナンスのプロ catch
#41

時計修理技能士

思い出が刻まれた時計に、 再び輝きを与える、メンテナンスのプロ

セイコータイムラボ株式会社 サービス部
後藤 みりさん

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人生とともに時を刻み、思い出と結びついている、腕時計。時計修理技能士としてメンテナンスを担当し、お客様にとって世界にたった一つの大切な時計と向き合う、セイコータイムラボ株式会社の後藤みりさんにお話を伺いました。

時計修理技能士に憧れて

時計修理技能士に憧れて

小さい頃から絵を描くことや細かい作業が好きで、ものづくりに興味がありました。高校の進路選択の際、家の近くに時計修理の専門学校があったこともあり、時計修理技能士に憧れ、入学を決めました。専門学校に3年間通い、基礎的な知識と技術を学んだ後、当社に入社しました。3カ月の研修後、修理室に配属、初めての修理では、ドライバーやピンセットを持つ手が震えるくらい緊張しました。“大丈夫だから”という上司の温かい声に励まされながら、何とか無事に終えることができ、とても嬉しかったのを覚えています。

すべての工程を、一人で担う

すべての工程を、一人で担う

当社は、お客様の時計を一人の修理士が最後まで担当する一人完修型の修理サービス(※)を提供しています。修理士は、お預かりした時計の裏蓋を開けて状態を判断し、分解・洗浄後、壊れた部品を交換、あるいは修理し、きれいに組み上げて注油した後、精度調整や可動テストといった検査までを一貫して担当します。分業化すれば効率は良くなりますが、高い専門性を備えた一人の修理士が最初から最後まで責任を持って請け負うことで、品質を担保しています。 今は、クオーツ時計の電池交換をメインに担当していますが、種類が多く、モデルごとに動作や機能が異なるため、製品情報についてしっかり理解・把握しておかなければなりません。部品は小さくて数も多く、通常50〜100、多いものは400以上のパーツで構成されています。作業書の手順に基づいて分解しますが、修理後、元通りに組み立てるのに、部品の状態や順序を覚えておく必要があり、複雑な機構の場合は、写真などに記録しておきます。
※一人完修型 : 一人の担当者が修理完了まで担当することを意味する社内造語

お客様の想いを受け止めて

お客様の想いを受け止めて

以前、お預かりした時計に、「母から受け継いだ時計なので、大事に直してください」という手紙が添えられていたことがありました。時計を長く大切に使いたいというお客様の想いに応えられるよう、気持ちを込めて修理し、動かなかった時計が新品のような輝きで再び動き出す姿を目にすると、やりがいを感じます。一人で修理工程をすべて担うのは責任が伴いますが、達成感も大きく、この仕事の魅力の一つだと思います。お客様が肌身離さず身につけている大切な時計であることを常に心に留め、一つ一つ丁寧な作業を心がけていきたいと思います。

技能五輪全国大会で、銅賞

技能五輪全国大会で、銅賞

学生時代、技能五輪全国大会に2度出場し、銅賞の受賞経験がありましたが、社会人になって再度出場者に選ばれました。技能五輪は若手育成を目的とした大会なので、23歳以下という年齢制限があり、当社では入社1、2年目の新人が出場します。私は3回目の出場となるので迷いましたが、学生最後の大会で受賞を逃した悔しさもあったので、出場を決意。3カ月前の課題公表と同時に練習をスタートし、課題の機械式時計のオーバーホールも担当させてもらいながら技術を磨き、本番に臨みました。当日は緊張からアクシデントもありましたが、再び銅賞を受賞することができました。五輪を機に新たなスキルが身につき、担当できる時計の種類が増えて、仕事の幅が広がりました。

専門性を高めていきたい

専門性を高めていきたい

修理する時計は、一つとして同じものはありません。種類、使用状況によって、コンディションが異なるため、それぞれアプローチを変えなければなりません。マニュアル通りにできるものではなく、部品一つ一つに目を光らせ、時計の状態を正しく判断する必要があり、そこが製造と異なる修理の仕事の難しさです。まだ手がけたことのない時計はたくさんありますが、まずは担当する仕事を完璧にこなし、後輩からの質問にもしっかり答えられるようになりたいと思います。知識・技能を高め、時計修理技能士1級取得に挑戦し、いずれはハイエンドモデルの修理にも携われるようになりたいと思います。当社では独自のマイスター制度を導入しており、ブロンズ、シルバー、ゴールドという3つのランクがありますが、まずブロンズ認定に向けて専門性を高めていきたいです。

ピンセットの先まで、指先である

時計修理の道具は、既製品を自分用にカスタマイズします。“ピンセットの先まで、指先だ”と上司に言われましたが、特にピンセットは、極小の部品を掴まなければならないので、ヤスリなどで削って先端を尖らせ、小さいものでもしっかり掴めるよう加工します。それぞれの手先の感覚によってカスタマイズの仕方が異なり、先端を鋭利にする人、少し丸みをつける人、また先端部の弾力も、バネを効かせる人、ふわふわにして指先の細かい動きに対応できるようにする人など、さまざま。同じ作業でも、修理士によって使う工具は種類も数も違います。

社名 セイコータイムラボ株式会社
本社所在地 東京都江東区新大橋1-12-13
TEL 03-5624-2111
主な業務内容 セイコーブランド等各種腕時計の修理サービス
セイコー純正部品の販売
ホームページ セイコータイムラボ株式会社のホームページへ

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