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配管技能者の育成・指導を通じて、 技能の継承と人づくりに貢献。 catch
#44

現代の名工

配管技能者の育成・指導を通じて、 技能の継承と人づくりに貢献。

東京都立多摩職業能力開発センター
訓練課 主任指導員
阿部弘之先生

厚生労働省では、年に一度、卓越した技能を持ち、その道における第一人者とされる技能者の方々を「卓越した技能者(通称・現代の名工)」として表彰しています。今回は、配管技能者の技能継承や人材育成に貢献し、2022(令和4)年度、現代の名工を受賞された、職業訓練指導員の阿部弘之先生にお話を伺いました。

功績の概要

職業訓練指導員として30年にわたり、給排水・給湯などの水まわり設備を担う配管技能者の養成に携わり、管工作においては、作業効率や品質の向上、仕上げの美観性など、作業技法の研鑽に努める。また、「技能と人づくり」を目標に、技能五輪国際大会における選手の指導、さらに「若年技術者指導用テキスト・DVD」の編纂など、若年技能者への指導とともに指導者の育成・指導で技能継承・人材育成に貢献するなど、多方面にわたる功績により、「卓越した技能者(現代の名工)」を受賞。

転職を機に、指導員の道へ

転職を機に、指導員の道へ

受賞に際しては、まさか自分が、というのが正直な感想です。家族を含め、これまで縁のあった方たちへの感謝の気持ちでいっぱいです。
35歳で精密機械メーカーの建設担当から転職したのが、配管技能者育成に携わりはじめたそもそものきっかけです。知人から職業訓練に携わる人材を東京都が募集していると聞き、職業訓練指導員の仕事を調べたところ、前職で携わった工場・研修施設の立ち上げや建物保守教材づくりの経験が活かせるのではないかと考えました。配管に関する知識や技術については、以前、大学病院の職員をしていた際に、建物の営繕を含め、設備管理を担っていたことから、経験知はありました。ただ、深い職人技や教える技術まではなく、最初の1年間は苦労しました。先輩指導員に手ほどきを受けながら、学校の道具を借りて、自宅のベランダで土日に練習し、指導技術を磨きました。

「考えること」が大切

「考えること」が大切

職業訓練校では、訓練期間1年の「水まわりスペシャリスト科」を担当、自らマニュアルを作成し、実技指導を行っています。座学は嫌いなのに、作業では筋のいい生徒がいて、彼らに「技能五輪」などの目標を与えると、すごい力を発揮する。自分の生きる道に目覚め、職人として成長していく姿を目の当たりにするのは、とても嬉しいことで、人づくりにやりがいを感じます。私の父は大工の棟梁でしたが、「人から教わったことは、いずれ忘れる。それを自分のものにするには、研鑽、試行錯誤、探究心。つまり、考えることが大切だ」と、よく口にしていました。私が教えるマニュアルは、あくまで私の視点で創り上げたもの。それを生徒がまず、体験する。その後、自分なりに研究し、磨きをかけ、自らの技能にしていくことが大切です。教わったものを反芻するだけでなく、試行錯誤を重ね、研鑽し、技能を高められる人が、配管工として成功する。教え子でも、早くて、品質がよく、見栄えのいい仕事ができる人は、稼げる配管工になっています。

技能五輪国際大会への階段

技能五輪国際大会への階段

指導の傍ら、私自身も技能の研鑽に努め、熟練技能を競う「技能グランプリ」にチャレンジし、入賞しました。当時、指導員が出場するケースは珍しかったようで、これがきっかけで声がかかり、39歳から技能五輪全国大会の競技委員をすることになりました。
技能五輪は、世界各国からの選手が技能を競い合う国際大会も2年ごとに開催されます。2001年に初めてソウル大会を見学しましたが、日本代表選手は経験やノウハウが次大会の選手に引き継がれず、メダル獲得には、業界を交えた継続的な選手育成と体制の整備、ノウハウの蓄積が必要と感じました。当時、技能五輪の国際大会と国内の全国大会では、課題の要素が全く異なっていました。しかも、全国大会の優勝者が国際大会に出場するまで半年しかなく、課題の準備には時間が足りません。全国大会が国際大会の予選も兼ねるのであれば、課題を国際大会同様の要素にすべきだと考え、3年かけて課題変更に取り組み、 2004年に国際大会に臨む基盤を整えました。

メダル獲得へ

メダル獲得へ

技能五輪国際大会は、各職種ごとに代表選手1名、選手の指導および競技課題の作成・採点を行うエキスパート1名、さらに必要に応じて通訳1名の合計3名が参加します。私は、2003年から配管職種のエキスパートとして関わりましたが、その年は7位。2005年のヘルシンキ大会では、8位とメダルに届きませんでした。2007年の静岡大会では、ホスト国として総監督を務め、40年ぶりに銀メダルを獲得することができました。指導する選手には、国内・国際競技大会において、参加するだけなのか、入賞を目指すのか、金メダルを狙うのか、目標によって指導法や準備が変わります。大会では、事前に公表されていた課題が当日変更されるので、瞬時にその場で考え、対応する力が求められます。自分でしっかり図面を読み取り、作業手順を組立てることが求められます。特に国際的な舞台では、選手本人の強い意志と覚悟、そして、指導者によるメダル獲得に向けた戦略がなければ、勝利を手にすることはできません。

自らの技能に誇りを持つ

自らの技能に誇りを持つ

暮らしを支えるインフラを担う配管工の仕事は、誰にでもできるものではなく、優れた技能が求められます。地味な仕事かもしれませんが、お客様から感謝され、自分の手がけたもの、作ったものが残るのは、技能に根ざした仕事の利点、面白さだと思います。常に謙虚な姿勢で取り組むとともに技能の研鑽に努め、より良い仕事をするために創意工夫を凝らし、「考えられる人」になってほしい。さらに、身だしなみに気を配り、約束した時間を守って、高品質な仕事をする。整理整頓されている作業環境の下、品質良い施工は、お客様の安心にもつながります。暮らしを支える仕事であることが、配管工という職種の最大の魅力。自分の仕事に誇りを持ち、謙虚さを備えた職人、そういう職業人になってほしいと思います。

   
s学校名 東京都立多摩職業能力開発センター
学校所在地 昭島市東町3-6-33
連絡先 TEL:042-500-8700
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