ものづくり職人の優れた技能を職場見学会や現場での実習機会を通じて直接体験することができる「職人塾」。ものづくりに関心がある人にとって、関連職種の実際の仕事を体感できる貴重な機会となっています。職人塾に参加し、自身の進む道を見つけ、椅子張り職人として活躍する株式会社種沢製作所の池田晴季さんにお話を伺いました。
職人塾とは
2005(平成17)年から始まった職人塾は、優れた職人の技を職場見学会や現場での職場体験実習を通じて体感し、ものづくりの実際や素晴らしさを知ってもらうこと等を目的とした東京都の事業。34歳以下、現在仕事に就いていない方、臨時的な職に就いている方、または学生で、ものづくり職種への就職を希望する方を対象に、複数のものづくり関連職種において職場体験実習を実施している。参加費用は無料(交通費等は自己負担。ただし、職業体験実習先に通う際の交通費については、1日に付き1,000円を限度に実費を支給)。
進む道に迷って
大学時代は工芸学科で鋳造を専攻していました。ものづくりは好きでしたが、就職活動の時期を迎え、自分が何をつくりたいのかがわからなくなり、体験込みで現場を見たいとは思いましたが、一人で探して行くというのはかなりハードルが高いと感じていました。大学4年の9月頃、たまたま職人塾のサイトを見つけ、実際に現場が見られるということだったので、親に相談したところ、「面白そうじゃない」と背中を押され、参加することにしました。
職場見学会に参加
最初に職場見学会で参加したのは、クラシック系の椅子を扱う工房でした。どのような作業をするのか説明を聞きながら、道具や工房内を見せてもらいましたが、カメラ越しだとよくわからないというのが正直な印象で、現場に行けるのであれば、実際に見てみたいと思いました。数カ月後、現地体験できるということだったので、職場見学した工房と今の職場の2箇所で体験実習に参加しました。椅子張り自体をよく知らなかったので、この時に初めて張り替え作業を見て、面白い世界だなと思いました。
工房の印象と決め手
それぞれ工房の印象はかなり違いました。最初に見学した工房は、ロココ調(※)などの椅子を扱っており、作業も親方一人。一方、今の職場は人も多く、職人それぞれが作業を担当し、扱うのは現代的な椅子です。クラシックな椅子もかっこいいとは思いましたが、身近な椅子を扱う方が自分には向いているのかなと感じました。決め手となった理由は、分業制でなかったこと。一からすべて作業できるように職人を育てているという社長の話を聞き、手に職をつけるなら、自分一人でできるようになりたいと考えていたし、周りに見習える先輩がたくさんいる環境も良いなと感じました。
※ロココ調/17〜18世紀のフランスで流行した優雅で華やかな曲線美が特徴の椅子
見て体感したからこそ
大学では金属を扱っていましたが、自分は木材や鉄などの硬い素材を扱うよりも、粘土の造形など、手の中で柔らかいものを動かしている感覚の方が好きで、得意と感じていました。椅子張り見学の際にウレタンを削って形にしていく加工が面白そうで、張り地として皮やビニール、布地を型取って成形し、生地を縫う作業も経験したことはありませんでしたが、自分にはできそうに思えました。そういう直感は、現場を見たからこそわかったことで、体験実習に参加したのは正解だったと思います。
視野を広げる機会として
職人塾は、自分の視野を広げる機会になりました。まったく知らない分野だったので、面白い世界があることを知るきっかけになったし、職人塾に参加していなければ、今ここにいなかったかもしれません。見学した工房はどちらもよかったし、体験までさせてもらえたので、私にとっては満足という感想しかありません。目の前にできることを差し出されて、そこから自分に合ったものを選ぶことができる。職人塾は、ものづくりを志す人にとって大きな一歩になると思います。初めてのことでも尻込みせず、気軽に参加してみれば楽しいし、自分とものづくりをつなぐ機会として、新しい世界が開かれると思います。
初めての椅子張り体験
体験実習に1カ月ほど通いましたが、2週間くらい経った頃、実際にお客様から依頼のあった椅子張りを担当させてもらいました。社長に一から教わり、付きっきりで作業を指導していただきながら、最後まで完成させ、納品することができました。椅子張りの楽しさを経験でき、これが自分の仕事になるんだという実感が得られて、とても印象に残っています。

| 社名 | 株式会社 種沢製作所 |
|---|---|
| 所在地 | 東京都大田区矢口2-15-2 |
| 連絡先 | TEL:03-5482-7002 |
| ホームページ | 株式会社 種沢製作所のHPへ |
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