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江戸から続く東京の伝統工芸が、一堂に会す! catch
#122

東京都伝統工芸品展2026

江戸から続く東京の伝統工芸が、一堂に会す!

リポーター
ものづくり部 部長 わざねこ

新年を迎えた1月7日(水)から12日(月)の期間、東京の伝統工芸品が一堂に会す「第69回東京都伝統工芸品展」が新宿高島屋で開催されたよ。匠の技と逸品に触れる機会として、展示・販売や製作体験、実演などが行われ、大勢の人で賑わったんだ。初日の会場の様子を、わざねこがリポートするね。

本場黄八丈とは

本場黄八丈は、東京から南へ約300キロ離れた太平洋上に浮かぶ八丈島で生まれた絹織物。島に自生する植物から採った天然染料を使い、黄色、樺色(かばいろ:赤茶色)、黒色の3色を基本に染色する。黄色に染めるのはコブナ草、樺色(かばいろ:赤茶色)はタブの木を使い、黒はスダジイ(椎木)の樹皮を煎じた染液を使う独自の染色法で、黄八丈独特の染めと織りが特徴。

本場黄八丈とは

3つの色と織りの組み合わせから生まれる絹織物

3つの色と織りの組み合わせから生まれる絹織物

本場黄八丈は、島固有の風土から生まれた絹織物。お話を伺ったのは、黄八丈織物協同組合の加藤久江さん。
「黄八丈の名で親しまれてきたように昔は黄色が主流でしたが、今は黒が人気です。黒の染めは、スダジイ(椎の木)の樹皮を煎じた液に一夜漬けて脱水し、屋外で干す工程を40回ほど繰り返して染め上げます。グレーなどの淡い色合いは、染めの回数を調整することで仕上げています。織りは、完全な手織り。一般的な“平織”の他、複雑な模様が浮き出る高度な技術が必要な“風通くずし”や“たつみ綾” 、菱型の地模様が並んだ“まるまなこ”など、さまざまな種類の“綾織り”が特徴です。」
ブースには、きれいな着物や帯が並んでいたよ。織がしっかりしているから、丈夫。なのに、生地が身体に馴染んで、着心地はしなやか。着やすいから、昔は普段着として使われていたそうだよ。織り手にとっては、古典柄を使った地模様に加え、基本3色を組み合わせて多彩な柄をつくることができるので、可能性は無限大。古典柄を受け継いで伝統を守りながらも、自分たちの手で新しい表現を生み出せる自由さが、黄八丈の魅力だね。

江戸つまみ簪とは

七五三や成人式、正月など節目の行事で着物姿の女性の髪を飾る、「簪(かんざし)」。べっ甲、銀細工、サンゴ玉、ガラス玉など、さまざまな素材がある中で、布地を使っているのが「つまみ簪」。羽二重という薄い絹の織物で花や鳥を作り、華やかに装飾した髪飾りとして仕立てていく。正方形に裁断された布地をピンセットでつまみながら、折り紙のように折り畳むことから、その名が付けられた。

江戸つまみ簪とは

薄い絹をつまみ、折り畳んでつくる髪飾り

薄い絹をつまみ、折り畳んでつくる髪飾り

色とりどりの美しい正方形の薄い生地をピンセットで丁寧に折り畳みながら、一弁の花びらに仕立てていく。この繊細な作業を披露していたのは、つまみかんざし博物館・イシダ商店の石田毅司さん。
「羽二重は生地が薄いので細工がしやすく、つまんで折り畳みながら、花や鳥を形づくるパーツを仕立てます。糊が乾いたら、それぞれを土台に糊付けして簪の形に仕上げていく。最近は染工場が少なくなったので、羽二重も自分で染めます。デザインを考え、色を決めて染色したら、形をつけやすくするために薄く糊をかける「糊引き」をしてから裁断する。作るパーツによって、正方形の生地の大小はさまざま。すごく小さいものもあります。」
簡単なデザインのものでも、生地からつまんで組み上げるまでに2日。複雑なデザインになると、作業に4〜5日はかかるそうだよ。昔はピンセットが高価だったので、細い竹箸などを使ったのではないかといわれているよ。江戸時代中・後期の浮世絵にも。「つまみ簪」は描かれているけれど、詳しい資料が残されていないので、使われていた道具や発祥についても諸説あってわからないんだ。最近は手芸ブームで、アマチュアの人がつまみ細工で簪を作るのが流行っているんだって。色とりどりの色彩が目に楽しいし、飾れば華やかな気分になるね。

江戸和竿とは

江戸和竿は、1本の竹を使った「延べ竿」に対し、数本の種類の異なる竹を継ぎ合わせて1本にする「継竿(つぎざお)」。発祥は京都とされ、独特の装飾と美術品のように作られた京竿に対し、釣り人の趣向や魚の種類、釣る時期、場所、漁法に応じて竹の種類、工程などを変え、職人が熟練の技で作る洗練された工芸品。

江戸和竿とは

江戸の粋を極めた工芸品江戸和竿組合
理事長 中台泰夫さん

江戸の粋を極めた工芸品

美しい漆塗りで仕上げられた精緻な釣竿。複数の竹を組み合わせ、それぞれの継ぎ口は寸分の緩みなく、ぴったりと合わさり、それぞれを継なぐと、一本のしなやかな釣竿になる。
「釣りは、浮世絵にも描かれており、江戸の粋な旦那衆の遊びとして重要な文化の一つでした。その道具として、江戸和竿は実用品であると同時に、他の釣竿とは違う、職人の芸が詰まった工芸品の極みです。」 そう話すのは、江戸和竿組合の理事長、「竿中」の中台泰夫さん。
「盛岡竿、仙台竿、庄内竿、岐阜の郡上竿など、全国各地に釣竿はありました。1シーズン使ったら、翌年のために新たに竹を切って囲炉裏にぶら下げ、乾燥させてから、新しい竿を作る。それが、江戸では職人の工房で作られるようになり、実用性と芸術性を兼ね備えたものになりました。江戸和竿の職人の系統を遡ると、元祖は1788(天明8)年に創業した秦地屋東作(たいちやとうさく)にまで遡ります。」
江戸和竿は、魚の数だけ種類があるそうだよ。
「例えば、はぜ竿。はぜ釣りは6月から始まって、月ごとに7月の竿、8月の竿、9月の竿があり、釣り場によっても違うし、短い竿から4〜5mの長い竿を使う人など、種類は無限にあります。同じ釣船に乗っていても、みんな違う竿で楽しむ。」
和竿は1匹の魚を釣り上げた時の面白さ、釣り味が全然違うんだって。そこに釣りの醍醐味が凝縮されている。はぜ、たなご、ふなは、和竿の方がよく釣れるそうだよ。釣り好きの人は、ぜひ試してほしいな。

東京彫金とは

金・銀・銅・鉄などの金属表面に、鏨(たがね)で精緻な模様を彫り込む彫刻技術。彫金のルーツは、古墳時代後期に渡来した工人によって伝えられた頃まで遡る。江戸時代には煙管(キセル:刻みたばこを詰めて吸う喫煙具)や根付(ねつけ:和装で小物を帯から吊るす際に固定する留め具)などに用いられて流行し、明治以降、近代彫金として根付いた。

東京彫金とは

金属に模様を彫り込む金属工芸日本彫金会
会長 小川真之助さん

金属に模様を彫り込む金属工芸

金属を叩く、トントンという甲高い音が小気味良く響く。彫りの実演を披露していたのは、日本彫金会会長で伝統工芸士の小川真之助さん。
「金属工芸には彫金、鍛金、鋳金がありますが、東京で伝統工芸に指定されているのは、鍛金と彫金です。鏨を使って金属を彫るのが彫金。今はアクセサリーが主流ですが、基本は金属に模様を彫るのが仕事。金、銀、銅、鉄、どれに彫っても彫金です。」
まず紙に筆で下絵を描き、それを写し取って、金槌で鏨を叩きながら彫っていくよ。
「鏨は彫るものによって変わるので、種類は無数。彫りたいものに合う鏨がなければ、自分で作ります。1回使って、引き出しに仕舞い込んでいるものもあり、私は祖父の代から受け継いでいるので、千くらいになります。絵柄に応じて、使う鏨を判断して選ぶ。そこに彫金家の個性が出ます。」
東京彫金は、華美にならない洒脱なデザインが特徴。全面に模様を彫り込むのではなく、全体の空間を生かした彫り方をするところが魅力。使い込むほどに味わいが出てくるそうだよ。


伝統工芸の担い手である職人さんと直接話をしながら、実際の工芸品に触れ、その魅力を確かめることができるのは、東京都伝統工芸品展の良さ。話を聞けば理解が深まり、工芸品への愛着も増すと思うよ。とっておきの逸品と出会える絶好の機会。来年も楽しみだな!

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