自動車のエンジンパワーを効率よくタイヤへ伝達するための変速機(トランスミッション)の主要部品―ギア(歯車)。動力の強さや回転数を調整する役割を担い、ギアをチェンジすることで適切な動力を生み出し、効率的な走行を可能にするよ。自動車の駆動系部品の製造を手がける株式会社内野製作所は、ミクロン単位という極めて高い精度でギアを加工しており、特にギアの歯の表面を仕上げる歯車研削技術は、世界トップレベルの水準を誇る企業。2021(令和3)年度の「東京都中小企業技能人材育成大賞知事賞」で大賞を受賞するなど、独自の方法で技能者の育成と技能継承に取り組んでいるんだ。工場でギアの製造工程を見学してきたので紹介するね。
高精度な加工技術で、試作部品やF1用のギアを製造
1927(昭和2)年に織機部品修理会社として創業した株式会社内野製作所さんは戦後、自動車部品の加工をスタート。長い歴史の中で培ってきた加工技術を土台に、現在では新車開発に伴う試作や、F1をはじめとするモータースポーツ用途の高精度ギアやエンジン内部部品、さらには航空機などの駆動系機械部品に用いられる高品質・少量生産のギアを中心とした金属加工を手がけているんだ。工場とは思えない美しい外観が特徴の自社工場には、最先端の加工機械や検査機器が揃っており、クリーンな製造環境の下、豊富な知見を持つベテラン技術者と感性・機動力を備えた若い世代によるチームワークを駆使して、日々ものづくりと向き合っているよ。受注生産を中心に、少ないものは10個単位、多くても200個ほどの少量多品種による一貫製造で、高精度の精密加工ニーズに応えているんだ。
左上:加工前の金属素材
右上:複合旋盤機内部(加工に応じた刃の交換が可能)
下:ドイツ製の複合旋盤機
第一工程―粗加工は、ものづくりの第一歩
製品を作るための加工プロセスは、「第一工程(粗加工)」と「第二工程(仕上げ加工)」の大きく2つに分かれるよ。
第一工程は、素材を図面通りの形に整える「粗加工」で、ものづくりの第一歩。鉄やアルミなどの素材に応じた最適な加工条件を見極め、NC旋盤や複合旋盤機などの使用機器や工具、加工方法を細かく調整しながら進めていくよ。
製品ごとに段取りを工夫し、さまざまな形状に対応しているんだ。最初に材料となる棒状の鋼材を加工する工程が「旋盤加工」。鋼材を高速で回転させながら、表面に刃物(バイト)を当てて削っていくよ。削る量が多いので、丸太のような鋼材の形が大きく変わるのが特徴。この工程では、金属の外側を削る「外径加工」や中央に穴を開ける「穴あけ」、溝を掘る「溝加工」など、さまざまな加工ができるんだ。
上:ワイヤー放電加工機
下:型彫り放電加工機
精密部品製造に欠かせない、さまざまな加工方法
切削では対応が難しいチタンなどの硬い金属や複雑な形状などを加工する際に活躍するのが放電加工だよ。 型彫り放電加工は、銅の電極に彫り込んだ形をワーク(加工物)に写し取る加工方法。火花で金属を少しずつ溶かしながら形を作っていくよ。細い金属ワイヤーを使って、火花の力で金属を切り出すのは、ワイヤー放電加工。切削では難しい形状や硬い材料を、安定した精度で加工できるのが特徴だよ。放電加工は、後工程で性能を作り込むために形を整える重要な工程なんだ。
上:ホブ盤内部
下:マシニングセンタ
「歯」を形づくる工程
ギアの「歯」の部分を形成する工程が「歯切加工」。その代表的な方法が「ギヤホブ加工」だよ。「ホブカッター」という特別な切削工具を使って歯形を作っていく切削加工の一つなんだ。円筒形のホブカッターの周囲に歯が刻まれていて、加工物と同時に回転することで、歯形を削り出し、精密にしていくよ。
その他、ギヤホブ加工ではできないものを、ピニオンカッターを使って歯形を仕上げる後処理「ギヤシェイバー加工」や、シェービングカッターを用いて歯面の微細な凹凸を整え、歯形精度や歯当たりを向上させる「シェービング加工」も行っているよ。歯切加工は、歯の形や精度によって、静粛性や耐久性、動力を伝える力が大きく変わってくるため、ギアの性能そのものを作り込む上で、とても重要で繊細な工程なんだ。
歯切加工で「歯」を形づくった後は、製品によってはマシニング加工が行われるよ。難度の高い複雑な形状の部品加工にも対応できるよ。「マシニング加工」は、マシニングセンタと呼ばれる自動制御の工作機械を使って、高速回転する工具で材料を削りながら、さまざまな形に仕上げていくんだ。穴あけ、平面、溝、ネジ穴、3次元形状など幅広い加工に対応するよ。
左:複合歯車研削機
右:平面研磨加工機内部
第二工程―砥石を使って歯を精密に仕上げる
完成状態に近くなった「歯」の表面を研削盤という機械で削り、ミクロンメーター単位(1ミクロン=1/1000ミリ)の精度で整えるのが仕上げ加工だよ。「歯車研削」は、ギアづくりの最終仕上げで、製品の摩耗や振動を抑え、静かで滑らかな回転を実現するための重要な工程。これによってギアの性能や寿命も大きく向上するんだ。
研磨・研削加工で使われる砥石(といし)は、細かな硬い粒子を固めたもので、金属の表面を少しずつ削り取るための工具だよ。家庭で包丁を研ぐときに使う砥石と基本的には同じ。歯車研削では、単に削るだけでなく、歯形や歯当たりを細かくコントロールすることが求められるため、砥石の選定や条件設定、加工の組み立てが、品質に影響するんだ。
それ以外の研削加工としては、平らな面を鏡のように滑らかに仕上げる「平面研削」、エンジンや油圧シリンダーなどの金属部品の内側の穴(内径)を削る「内径研削」、シャフトやベアリングなどの回転する部品の外側(外径)を円筒状に削る「外径研削」があるよ。性能や信頼性に直結する重要な工程として、熟練の技術者が担っているんだ。
最後は、検査の工程。24時間一定の温度に保たれた専用の測定室には、三次元測定機や歯車測定器など、最新鋭の測定機器が備えられ、まさに「品質を守る最後の砦」として厳重にチェックされているよ。

| 会社名 | 株式会社内野製作所 |
|---|---|
| 所在地 | 東京都八王子市戸吹町2105番地 |
| 連絡先 | TEL:042-696-6210 |
| ホームページ | 株式会社内野製作所のHPへ |
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