東京の匠の技

東京都畳工業協同組合

小曽根涼一さん

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い草の青くて爽やかな香り。素の足裏をやさしく押し弾く感触。寝転ぶと、田を渡る風が含む稲穂の匂いを仄かに感じる。畳を思う時、そこには懐かしさや温もり、やさしさを感じる。それは、数々の想い出と分かち難く結びついているからなのか。畳とは、かつての日本そのものであり、私たち自身とつながるものでもある。

日本固有の座具として

畳の歴史を紐解くと、日本固有の座具として古事記にまで遡る。その語源は、ムシロやゴザなど、折り返して重ね、たためる薄い敷物の総称として用いられ、「たたむ」が「たたみ」になったとされる。平安時代、今のように部屋に据えるものとして、日本独自の生活必需品となっていく。畳の技術のもとは、奈良から京都へ。それが江戸に移ってきた際に、大きさや作り方が変化したという。
「江戸の町をつくるにあたり、畳が一般の家に普及するようになり、大量に作れる方法に変わったのだと思います。今も京都と関東で手順が違います。」

畳、今昔

今は、藁を一切使わないものもある。藁もボードも一長一短、100点のものはない。 「畳は数年で傷むので取り換えますが、その時に手をかけられるのが藁。凹めば、藁を足せる。発泡スチロールは凹んでも、ある程度まで手をかけられますが、その先は難しい。今の住宅は気密性が高く、自然のものを使う場合、梅雨時等は使い方でカビが出やすくなります。一方、ボード製は工業製品なので、ダニがついていません。でも、生活するうちに棲みつくので、ゼロではない。メリット・デメリットを知り、住宅事情に合わせたものを使う必要があります。」
今の藁は、機械でプレスする。
「以前は、畳屋が空いた時間に自分で編みました。丁寧に作られたものだと、80年前のものでも、機械のものより、はるかにいい状態です。手で作られたものは長く持ちます。」

見えないところに、手をかける

畳は作って終わりではない。傷んだら、返し、表を張り替える。
「自分で作った畳が戻ってくると思うと、その時に作業しやすいように手をかけてつくります。見えないところに、どれだけ手をかけられるか。他の職人の仕事でも、畳を剥がして裸の状態にしてみると、自分はここまでできないという丁寧な仕事があります。」
職人の仕事が出るのは、四隅の角。
「角を、いかにきれいに出せるか。部屋に敷き詰めるものなので、その枚数だけ、角の精度を出さなければ収まりません。畳は一見、同じ大きさに見えますが、完全なオーダーメイド。置く位置も、どことどこが合うのかも決まっている。例えば、マンションの同じ間取りでも、少しずつ寸法が違う。その部屋に合わせたサイズと形で作ります。」
先人が作った畳を見て、何を感じるか。技術の先にあるのは、自分がどれだけアンテナを張って感じ取るか、その感性と姿勢が問われる。
「技術は努力すれば何とかなります。でも、先人の仕事を見て、すごいと感じるか、学べるものがあるかどうか。近所の畳屋さんが手掛けたものでも、歴史的な有職畳でも、よく観察することで、その仕事から学ぶことは多い。縫い方や針の扱い方の先にある感覚。それは、言葉では説明できない。それぞれの感覚でつかんでいくものです。」
米づくりの副産物として、稲作から生まれた日本独自の畳文化。そこでは、手をかけることが長く使うための知恵として、今も生きている。

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東京都畳工業協同組合/東京都畳高等職業訓練校
〒113-0034 東京都文京区湯島3-16-10
電話番号:03-3831-3276
公式ホームページ:http://www.tokyo-tatami.or.jp

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