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匠の技に触れ、ものづくりの世界を体感する、伝統と革新の祭典!(前編) catch
#78

ものづくり・匠の技の祭典2024

匠の技に触れ、ものづくりの世界を体感する、伝統と革新の祭典!(前編)

リポーター
ものづくり部 部長 わざねこ

日本のものづくりを支えてきた伝統的な匠の技と最先端のものづくり技術が集まる一大イベント「ものづくり・匠の技の祭典2024」が東京国際フォーラムで開催されたよ。8月2〜4日までの3日間で、なんと3万6千人もの来場者が訪れ、大盛況だったんだ!祭典の様子を、わざねこがリポートするね。

オープニングを飾る、匠の御輿

オープニングを飾る、匠の御輿

開会を告げるオープニングセレモニーで披露されたのは、「匠の御輿」。今回の祭典テーマである「祭」に欠かせない御輿を匠たちの技能のコラボレーションでつくり上げた特別作品だよ。御輿本体を手掛けたのは、建具の匠。多摩産材を刻み、精密な加工を施して、屋根、胴、台輪を製作。胴周りには、伝統的な柄である「麻の葉文様」の組子があしらわれているよ。
御輿の屋根を美しい生花で飾ったのは、フラワー装飾の匠たち。ピンポンマム、蘭、カスミ草などの花材を華やかに飾り、屋根紋として三つ巴文様を花で美しく再現。そして、御輿最上部の大鳥と四方を飾る可愛らしい小鳥を製作したのは、ジュエリー(貴金属装身具)の匠たち。緻密な作業で仕上げた真鍮に精密な刻みや彫りを施し、見事に仕上げているよ。匠たちの高度な技が凝縮した、オープニングを飾るにふさわしい作品。匠たちに話を伺ったので、紹介するね。

御輿に凝縮された、建具の技御輿の最下部の土台となる「台輪」。胴周りに刻まれた組子には、内側から和紙が張ってある。

御輿に凝縮された、建具の技

御輿本体を手掛けたのは、建具の匠・友國三郎さん。まず、基礎部分の台輪を造って柱を立て、屋根下の天井板を組んで、胴周りの寸法を割り出すんだ。その寸法をもとに刻んだのが、「麻の葉文様」の組子。平安時代から仏像などの装飾に使われてきた文様で、建物などでは「亀甲の麻の葉」が使われるけど、友國さんが「四角い麻の葉」にアレンジしたんだ。内側から和紙を張って、きれいに仕上げているよ。

感動の声に、嬉しそうな匠

感動の声に、嬉しそうな匠

45度の勾配(※斜めの傾き)で接点が交わる屋根は、角度を正確に割り出す必要があるんだ。指矩(さしがね)を使って角度を測る宮大工と違って、障子や襖などを扱う建具師は、勾配を割り出すのに慣れていないから苦労したそうだよ。屋根板には生花を挿す吸水スポンジを貼り付けるため、滑り止めの横木を渡しているよ。花の重みでスポンジが動かないように、15ミリ角の角材を木ねじでしっかり止めて、屋根板の表面には防水スプレーもかけているんだ。限られた製作期間で、これだけの大作を仕上げた匠の技は、やはりすごいね!来場者の「感動した」という声に、匠はホッとしたように微笑んで、嬉しそうだったよ。

生花を飾るための創意工夫

生花を飾るための創意工夫

屋根を飾る生花を活けたのは、フラワー装飾の匠・田邊和則さんと林三智さん。御輿の上に生の花を装飾するのは初めての試み。まず、どうしたら生花を活けることができるのか、会期中、花を保たせるには、どうすればいいのか、話し合いを重ねながら、具体的な活け方や高さ、花の角度を詰めていったそうだよ。屋根にセットする吸水スポンジは、花と水分の重みで落ちてこないように、建具の匠と相談して、スポンジ止めの木枠を横に渡してもらったんだ。スポンジはすぐに乾いてしまうので、毎朝、霧吹きで欠かさずメンテナンスし、3日間、きれいな状態に保ったそうだよ。さすがだね。

四神の色合いを、花で表現

四神の色合いを、花で表現

御輿は本来、東西南北を守る四つの神がいて、それぞれ司る色も決まっているんだ。東は青龍で青色、西は白虎で白、南が朱雀で赤(朱)色、北は玄武で黒。匠たちは、これらの色合いをカスミ草を使って三つ巴文様で表現したんだ。ベースの花は、四神の色が引き立つように、緑や白のピンポンマム、和菊、ヒペリカムの実を使って落ち着いた和のテイストで統一。アクセントとしてピンクの胡蝶蘭をあしらっているよ。使用する花は、屋根の面積と花のサイズから本数を割り出し、メンテナンス用の花も含めて算出したんだ。緑の和菊が300本、ピンポンマムは400本も用意したそうだよ。御輿の屋根を生花で飾るなんて、匠の技のマジックみたいだね。

真鍮の鋳物でつくった、金色の小鳥たち

真鍮の鋳物でつくった、金色の小鳥たち

御輿の天辺を飾る鳳凰と四方を守る小鳥を製作したのは、ジュエリーの匠・島功さんと三塚晴司さん、坂元勝彦さん。製作期間が限られている中、まず手分けして進められる小鳥から着手したんだ。坂元さんが小鳥の原型を作製、それをもとに島さんと三塚さんが真鍮の鋳物で、頭と左右の羽、胴体、脚、尾羽をつくり、それをつないで組み立てたんだ。尾にあしらわれたビーズは当初、カラフルなものを想定していたけど、御輿の方位の色に合わせて飾っているよ。四方の小鳥をよく観察すると、それぞれの羽の動きに表現の違いがあって、そこに作り手の個性が表われているんだね。

天辺で輝く、鳳凰

天辺で輝く、鳳凰

御輿の天辺を飾る鳳凰を担当した坂元さんは、金属を叩いて加工する鍛金や金属を彫る彫金での製作は工期的に無理だったため、粘土を使うことにしたんだ。まず骨格をつくり、金属製の尾羽、主翼を骨組みにつないで、彫刻用の粘土で肉付けしたよ。3日間、乾燥させてから、彫刻刀で彫りを入れ、下地に漆を塗ってから金箔を張るんだ。でも、粘土が漆を吸い込んでしまうので、ラックニスを塗って目止めし、2日間、乾かしてから、木漆を塗って金箔を張ったんだ。鳳凰の尾に飾られた色とりどりのビーズは、タイガーアイやアマゾナイトなどの宝石を使っているよ。とてもきれいだね。
ジュエリー製作では、加工時の表面の叩き方や力の加減で、作品に個性やセンス、技能が表われるんだって。作り手の気持ちが細部まで届いているかどうかで、醸し出す雰囲気も変わってくるんだ。匠の御輿を飾った鳥たちには、それぞれの匠の想いと卓越した技がぎっしり詰まって、輝いて見えるよ。



匠の御輿は、それぞれの匠たちの情熱と技と創意工夫が込められた、唯一無二の作品。どんな難題にも果敢に挑む匠たちの心意気と、それを具現化する高度な技、やり切る集中力に感嘆したよ。匠の技のコラボレーションが生み出す、至高の作品。来年の祭典では、どんな技の共演が見られるのか、楽しみだね。

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