熱エネルギーを無駄なく効率的に利用するため、ビルやマンションなどの建物の断熱・保温工事を行う熱絶縁施工。建物の熱絶縁施工は、地球温暖化対策や省エネルギー対策として、とても重要な役割を担っています。サンエム工業株式会社の向田優一朗さんに熱絶縁施工の一種・発泡ウレタン吹付工事(※)について伺いました。
※発泡ウレタン吹付工事:建築物の壁などに発泡ウレタンを断熱材として吹き付け、熱が伝わらない断熱層を形成する工事
父に誘われて
16歳から鳶職として働いていましたが、父親がウレタン断熱関連の会社で働いていたことから、仕事をしてみないかと誘われ、とりあえず経験してみようと思ったのが、この仕事に就いたきっかけです。
発泡ウレタン吹付工事は、断熱素材である硬質ウレタンフォーム(※)を噴霧状に吹き付け、発泡剤が膨らんで固まることによって建材一面に隙間のない断熱層を作ります。まず現場まで専用のトラックで発泡機やウレタンフォームの原液の入った2種類のドラム缶などの施工設備を運びます。現場に着いたら、吹付作業現場の周囲をビニールシートで覆って保護する養生を進めます。準備が整ったら、トラック内のドラム缶から作業現場までをつなぐホースの先を作業現場まで上げ、ミキシングガンを先端に装着し、ポンプで原料を吸い上げます。ミキシングガンで2液を混合し、発泡したフォームを規定の厚さに吹き付けます。高層のビルやマンションなどで、ホースの長さが足りない場合は、高所用の機械設備ごと、エレベーターで上げて作業を行います。
※硬質ウレタンフォーム:ポリイソシアネートとポリオールというウレタン樹脂の原料を混合して作られる発泡体で、断熱材として利用
理想のコンビを目指して
作業は基本、二人一組。私は吹付作業を担当し、相方は養生の設置と吹付後の養生の撤去と掃除などを行います。相方とのコンビネーションが重要で、コミュニケーションを取りながら、どう仕事を収めるかを考えます。先輩たちのようにハイレベルになると、お互い会話をしなくても、何をすればいいのか、相手が何を求めているのかがわかるので、特に話もせずに淡々と作業を進めることができます。関わりが長くなるほど、お互いのつながりも深くなる。そういう関係性を築きながら仕事が進むのが理想で、二人で現場作業をうまく終えられた時はすごく気持ちいいし、手応えも感じます。
「なぜ」の先にあるもの
ウレタンの吹付作業は一見、簡単そうですが、狙ったところに思い通りに吹き付けるのは、なかなか難しい作業です。仕上がりが目に見えてわかるので、細かいところに気を配りながら作業をします。自分の想定通りの仕上がりにならない場合は、「なぜ」そうなったのか、その理由を探るようにしています。自分の中で考えても解決できない時は、先輩に訊き、そのやり方を試してみる。毎日、試行錯誤しながら、現場での実践を通じて理解・体得し、技として身につけていくところに面白さを感じています。
厚みの規定値を確認する様子
感覚をつかむために
吹付作業は、感覚が重要です。同じスピードで吹き付ければ、一定の厚さになるかというと、そうはなりません。施工する職人各自が感覚的につかむもので、自分の感覚として、何回吹き付ければ、規定の厚みになるという目安はありますが、それは当人にしかわからないもの。その日の気温や躯体の下地の温度、夏と冬でも、発泡の仕上がりはまったく変わってくるので、同じ状況というのは基本、ありません。経験を積んで技術レベルを上げていくためには、常に自分自身のセンサーを働かせて、一つ一つの仕事に高い意識を持って取り組むことが重要になります。
美しい仕上がりを求めて
10代の頃は、特に考えもなく仕事をしていましたが、養生の準備や撤去の担当を経て吹付の担当になってからは意識が変わりました。いつか父を越えたいという思いで、背中を追いかけてきましたが、ある時、先輩たちに自分の仕事を見てもらった際に、「これでは、全くダメだ」といわれ、自分の欠点に気づきました。先輩の的確な指摘で、「何がダメで、何がいいのか」の判断基準が自分の中にできたことで大きく変わり、そこから周りのアドバイスや意見を取り入れ、意識して仕事に取り組むようになりました。今も先輩と同じ現場になったら、時間がある時に先輩たちの作業を見学しながら、いろいろ質問し、教わったやり方を自分なりに工夫するようにしています。美しく吹き付けられた先輩たちの仕事を見ると、自分との差を実感します。その違いが技能の差であり、何とかそこに近づきたいと思って日々研鑽しています。
繊細で、気まぐれ?
吹付作業に使用するミキシングガンはとても繊細で、日頃からきちんと手入れをしていても、ちょっとした加減で調子が悪くなります。きれいに吹き付けできている時の状態をいかに保つか。それが結構、難しく、現場の作業効率にも影響するので、ミキシングガンのクセとメンテンスの仕方はしっかり把握しておく必要があります。

社名 | サンエム工業株式会社 |
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本社所在地 | 東京都練馬区関町北1-15-5 |
連絡先 | 03-3928-6554 |
主な業務内容 | 不燃断熱工事、断熱工事、防音工事、耐火工事 |
ホームページ | サンエム工業株式会社のHPへ |