記憶に刻まれる印刷物を目指す。 catch
#98

特殊印刷

記憶に刻まれる印刷物を目指す。

株式会社 新晃社
小嶋 潤さん

特殊なインクや加工技術を用いることで、印刷物に独特の風合いや視覚的効果をもたらす、特殊印刷。ポスターやパンフレット、書籍や雑誌の表紙などに、「箔押し」 「アルミ蒸着」 「PP貼り加工」「擬似エンボス加工」といった特殊加工を施した印刷物は、見る人に強い印象を与えます。特殊印刷を手がける株式会社新晃社の小嶋潤さんにお話を伺いました。

特殊印刷とは

特殊印刷には、印刷物にゴールドやシルバーの箔を転写し、スタンプのようにロゴや絵柄を際立たせる「箔押し印刷」や、紙やフィルムの表面にアルミの薄膜を付着させ、金属的な輝きを表現する「アルミ蒸着」、本やパンフレットをフィルムでコーティングし、耐久性を向上する「 PP貼り加工」など、さまざまな方法があります。印刷物に特別な加工を施し、存在感や高級感を演出することで、見る人にインパクトを与え、手に取ってもらうための価値を付加する加工法です。

特殊印刷とは左上:箔押し
右上:アルミ蒸着
下:PP貼り加工

特殊印刷とともに

特殊印刷とともに

当社の特殊印刷は、UV硬化型の特殊なインクを使うUVオフセット印刷で、インクに紫外線(UV)を照射して瞬時に乾かすことで、通常の印刷では難しい素材への印刷や印刷後に特殊な後加工を施すことが可能になります。
私は特殊印刷対応の印刷機を担当し、特殊印刷全般を手がけています。印刷関連の知人の紹介で入社して20年。特殊印刷機の導入当初から担当しているので、特殊印刷歴は15年くらいになります。

速乾性を活かした印刷手法左:擬似エンボス加工/黒を印刷した上に加工を施し、表面にザラつきを表現
右:白インク印刷/色紙に印刷する場合、紙の色とインクが混ざらないよう、白インクを印刷した上に4色印刷することできれいな色を再現

速乾性を活かした印刷手法

特殊印刷では、商品パッケージ、カタログ、リーフレット、パンフレット、陳列棚を飾るPOPなどの印刷物を対象に、擬似エンボス加工や白インク印刷など手がけています。    
擬似エンボス加工は、2種類のニスを使用して擬似的に凹凸をつけて浮き上がらせるものですが、4色で刷った後に、最初のニスを載せます。この段階では、表面は滑らかな状態ですが、二度目の印刷でニスを載せることによって、表面にザラつきのある擬似エンボスに仕上げます。    
白インク印刷は、発色しにくい色紙でも、紙の風合いを活かしながら、しっかりインクを発色させることができる印刷方法ですが、最初に白を印刷し、その上からカラーを印刷するため、白インクの乾きが良くないと、2回目のインクが載りにくくなってしまいます。    
こうした特殊印刷では、UV印刷の速乾性はとても有効です。

品質と段取り

品質と段取り

オペレーターとして機械を任されるようになってからは品質第一で、お客様の要求品質に応えられるものをしっかり提供するよう心がけています。    
作業の段取りは、その日の予定表を見ながら組みます。印刷機は、紙にインクを転写するためのユニットを搭載しており、通常は墨、シアン、マゼンタ、イエローの各ユニットを紙が通ることで印刷されます。しかし、白インク印刷で白を先刷りするオーダーが入った場合は、最初に白インクを刷り、その後に、UVを照射してインクを乾燥させる「インターデッキ」を稼働させる作業があるため、ユニットの構成を組み変えなければなりません。その日に予定されている案件に応じてユニットの構成を考え、効率的に作業を進めるには、どういう段取りを組めばいいのかは、オペレーターの判断です。段取りどおり順調に進み、効率よく作業が完了した時はすごく気持ちいいし、達成感があります。

印刷機は、繊細

印刷機は、繊細

印刷は、その日の気温の影響を受けるため、温度と湿度を一定にしないと、同じクオリティに仕上げることができません。夏場は暑さでインクが柔らかくなり、逆に冬場は硬くなるので、空調で温度と湿度を管理し、作業環境を常に一定に保ちます。印刷機は繊細で、日々のメンテナンスを欠かさず行わないと調子が悪くなるので苦労します。お客様から前回同様の依頼が来た場合は、印刷機に保存されているデータで近い色を再現することは可能ですが、細かい調整は手動で行います。ミスがあった時のデータは忘れないようしっかり記録を残し、その数値を経験知として活かすことが大切になります。

ものづくりの手応えを感じて

ものづくりの手応えを感じて

普段は仕事が終われば、次の作業に集中するため、案件の内容はすぐ忘れますが、自分の手がけた印刷物をお店で見かけた時などは、作業時のことをいろいろ思い出します。妻の使っている化粧品のパッケージが、自分の手がけた仕事だったこともあります。関わった印刷物が世の中に出て、人の手に渡り、何かを伝えたり、記憶に刻まれたりするところに、この仕事の魅力があると思います。印刷業界はデジタル化が進み、変化の渦中にありますが、手がけたものが形になるというものづくりの根源的な魅力に変わりはありません。ものづくりに興味のある人にとっては、とてもやりがいのある仕事だと思います。

ズレ、禁物

印刷は4つの色の版を掛け合わせることで色彩を表現しているため、1色でも版にズレがあると、ぼやけて指定の色にはなりません。画像や文字がボケて見えづらくなるのは、こうした版ズレによって起こります。版ズレは温度や湿度の影響による紙の伸び縮みや静電気などが原因なので、色をかけ合わせる際にルーペで確認し、少しでもズレがあれば調整し、しっかり合わせます。そこにオペレーターとしての技術が求められます。

ズレ、禁物
    
企業名 株式会社 新晃社
所在地 東京都北区東田端1−7−3 田端フクダビル4F
連絡先 TEL:03-3800-2881
主な業務内容 ・商業向けオフセット印刷および製本、各種印刷物の製造     
・UVオフセット印刷による高付加価値印刷製品の製造
・印刷物の丁合、封入などのアッセンブリから発送
ホームページ 株式会社 新晃社のHPへ

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