寝具

東京都寝具技能士会

野原久義さん

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感触を確かめながら、もめん綿を丹念に選び、振り分ける。選び取った綿の配置を決め、丁寧に広げ、敷き重ねていく。加減を見つつ増し引きを繰り返しながら、やさしく撫でるように布団のかたちへと整形していく。全身を使って、全霊をかけて。綿と向き合う匠の背が汗を含み、作務衣に滲む。 何か想いを込めるような、その丹精な所作一つひとつが神事のようで神々しく、厳かである。

一人ひとりの眠りに寄り添う

毎朝、寝汗の気持ち悪さで目覚め、体調を崩した人、腰痛で寝つかれない人、不眠症を拗らせ、睡眠障害に陥った人、子供の夜泣きに悩まされ、育児ノイローゼになった母親等々、匠のもとには、眠りの悩みを抱える人々が駆け込んでくる。睡眠を巡るトラブルのほとんどは、寝具に起因する。人が健康に生きていく上で最も重要な“眠り”を担う寝具づくりは、質の高い快適な睡眠環境を提供することを使命とする。さながらドクターのように、匠はまず耳を傾ける。
「お客様の声を聞き、それぞれに適したものづくりを心がけています。お客様が求めるものだけでなく、そこにプロとしての技術・工夫をプラスし、熱い情熱を注いで、予想を超えた、感動していただけるものづくりをめざします。」

快眠に関わる5つの要素

快眠に必要な要素は5つ、という。
「まず、適度な弾力性。素材が柔らかすぎることで沈み込み、床から押されるような床付き感が睡眠を邪魔します。次に通気性。大人はコップ1 杯半から2杯の寝汗をかく。通気性が悪いと、湿気が行き場を失い、気持ち悪さで目覚めます。3つ目が保温性。自分の汗で体を冷やしている状態になり、体温低下に陥る。そして、吸湿性。汗が背中に溜まり、不快で目覚めます。最後が排出性。吸い込んだ汗を排出できる素材かどうか、それが重要です。」
この5つの要素を持ち合わせているのが、もめん綿の布団である。
「もめん綿は植物繊維で、生育環境で硬さが異なります。アメリカ綿、メキシコ綿、エジプト綿の順で柔らかく、これらはかけ布団向き。敷き布団に適しているのは、インド綿です。繊維が太く、中央の空洞面積が広いため、日に干すと膨らむ率が高い。つまり、干すことで汗などの湿気が乾燥し、空洞内の空気が温められて膨張します。太陽の熱を吸収すると、それが夜間にまで持続する。だから、ポカポカと暖かく、寝付きが良くなるのです。」

もめん綿の力を引き出す、布団づくり

布団は、綿づくりが肝。匠は綿を山型に重ねながら、身体が乗る中央は富士山のような台型に盛り上げる。
「伝統的な布団づくりは蒲鉾型。でも、寝た時に中央が沈んでしまう。私は、綿を敷いていく段階で、徐々に中高にして違和感を消していきます。折り返した後は、くぼみを埋め、中心部分は若干薄くなるので調整します。」
製綿機で綿を製造する際、繊維は縦方向に強いつくりとなる。つまり、横に引っ張れば伸びる。
「耐久性を考え、繊維の向きを見ながら、綿を縦横で構成します。干す時は、どうしても縦に引っ張られるので、綿切れを起こさないよう縦方向に強い構成で全体のバランスをとります。」
独自の作り方を工夫し、常にユーザーの使い方に応じて変えていく。
「お客様の声で成長する。声を聞き、それを基に工夫し改善を重ねる。それが私自身の成長につながっています。」
一人ひとりの眠りと向き合いながら、環境も含めた広い視座で、理想的な寝具のあり方を見つめている。

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