表具

一般社団法人 東京表具経師内装文化協会

前川治さん

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仕事に一切の妥協はしない。材料・道具を吟味し、見えないところに目を利かせ、気を配り、抜かりなく手をかけていく。結果は、自らはもちろん、後を継ぐ者ですら確かめることはできない。良し悪しは、100年、200年後の人が下す。名前は残らなくとも、仕事は残る。その意気を胸に、年月に耐えうる仕上がりかどうかを、常に問う。表具師の仕事とは、時の流れの中に生きる。

100年を見据える仕事

表具とは、書画を守るために布や紙を張って仕立てたものを指し、その歴史は奈良・平安時代の仏教伝来とともに始まったとされる。表具師は、和紙や裂地(きれじ)を糊で貼り合わせ、加湿と乾燥の加減を見ながら、ものを仕立てていく。糊と刷毛で行う仕事は掛け軸、額、屏風、襖をはじめ、天井貼り、壁貼り、壁紙、障壁画の壁や天井、細かいものでは巻物、画帖、和綴までと幅広い。祖父の代からの表具師。家ごとに流儀があり、同じ作業でも段取りや刷毛の角度など、細かい違いがあるという。
「完成形は同じでも、作業の工程や方法は違う。昔は仕事中に同業者が来ると、手元を伏せて作業を止めたものです。」
和紙を糊で貼り合わせる「裏打ち」の工程では、「総裏」と呼ばれる最後の裏打ちの際、お天気が10日以上続かないと仕上げてはならないとの口伝がある。糊も「寒の内」に炊くという口伝を、匠は頑なに守り続ける。
「木や土から作った材料ゆえ、自然には抗えません。水も、昔は水道事情がよくなかったので、井戸水の細菌が少なくなる寒い時期の“締まっている”状態の水がいい。塩素が含まれている水道水は、100年前にはなかったものなので使わないという家もある。そこまで気を使わないと、100年、200年保つものにはなりません。」

その道の流儀を、知る

仕立てでは、茶道、香道、歌舞伎、寺の宗旨によって決まった柄や形があり、指定されることもあるが、任されることもある。常にお客様のご希望に応えることを大切にする。
「例えば、夏ならば少し涼しげにし、水を連想させる柄の裂地を持ってきたり、歌舞伎の隈取りであれば、物語に関連したものをあてて遊んでみたり。本紙の作品が表現する世界観や背景、季節などを理解した上で適したものをあしらいます。」
それぞれの世界に流儀や符丁があり、それを知らないと仕事にならない。
「駆け出しの頃はドキドキしましたが、お客様とのやり取りの中で教えていただくことで、いろいろ覚えます。」

見えないところに手をかける

一点ものの作品と向き合う真剣勝負の厳しい世界。表具とは本紙を守り、引き立てるためのであり、それゆえ、経年変化に耐えうる仕立てでなければならない。「あるお宅で150年ぶりの襖の貼り替えをしましたが、縁を外して、上貼りを剥がし、下貼りを見たら、どうにもなっていない。作ったばかりのようで、びっくりしました。見えないところに手を抜かなければ、100年、200年、保つものができるかもしれない。いい仕事は残ります。」
長い年月を経て、ようやく答えの出る仕事。だがその時、自らはすでに存在しない。仕事だけが残り、その評価は後世の同業者に委ねられる。日々、自らの所作を問いながら、修練を重ねていくことでしか、残る仕事はできない。表具師とは、時の流れと向き合う仕事ともいえる。

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公式ホームページ:http://www.tokyo-hyougu.jp/index.html

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