東京の匠の技

洋裁(婦人服・子供服)

日本ファッションクリエーター協会

家内千恵子さん

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縫うという行為は、どこか祈りにも似る。一針一針に想いを込め、通した糸で生地をつなぎ、思い描いた形に作り上げていく。それは誰のためのものか。自分自身、あるいは大切な人、特別な誰か、だろうか。服を纏う時、その人は、何を思い感じるのか。糸が結ぶのは、人と人のつながりであり、その思いや願いに形を与えたものを服と呼ぶのかもしれない。

伝統技法で、手作りの温もりを加える

昔の技法を取り入れ、オリジナルの服づくりを手がける。
「 “こぎん刺し”という日本の刺繍法、縦糸や横糸を部分的に抜き取って模様を描く“ドローンワーク”というヨーロッパの技法、布の織り目に糸を通して模様を描く“スウェーデン刺繍”などを取り入れることで、シンプルでスタイリッシュな服に手作りの温もりを加えたいと考えています。」
布を寄せてギャザーにしながら模様にする刺繍法「スモッキング」。通常は、平面的に縫うが、それを立体にするオリジナルの技法を考案した。 「スモック刺繍は、欧米の農民の仕事着や子供服の飾りとして使われていた伝統的な刺繍法です。おそらく当時は保温や服を丈夫にするための手法として使われていたもので、シャツなどの平らなところに刺繍しますが、それを立体的なドレスに使ってオシャレなものにしようと考えました。ボディに合わせて生地のラインを入れ、金糸・銀糸の細い糸を使って繊細なアレンジにしています。」

感性と努力、そして継続

洋裁学校卒業後、すぐに教室で指導にあたる。好きな仕事だったので、結婚後も続け、50年のキャリア。中3の時、伝線したストッキングを縫った際、“上手ね。私のもお願い”と褒められたのが原点という。
「高校生の時に、生地を買ってきて、アスコットタイを縫ったら売れた。それが嬉しくて、洋裁に目覚めました。趣味で楽しむというより、形にして誰かに使ってもらう、着てもらうことに楽しみを覚えた。そこが始まりです。」
服づくりは、頭で理解して覚える人と手で覚える人がいる。
「必要なのは感性と努力。努力しないと、絶対にできるようにならない。努力を続けていれば、なんとかなります。継続が大切。」

誰かのために

今まで作った中でいちばんの自信作は、二人の娘に作ったウエディングドレス。
「すっきりとシンプルで、それでいて豪華なものがいいというので、生地選びからデザイン、縫い上がるまでに1ヵ月くらいかけましたが、二人とも満足していた。服装史を教えていた頃、14世紀にトルコからもたらされたボタンが、ヨーロッパで普及した際の服装の写真の中に、クルミボタンが32個並んでいるデザインがありました。それを見つけた時に、いつかウエディングドレスの背面を包みボタンで飾ってみようと思った。その実践です。前はすっきりしたデザインで、後ろに手間暇かけた自信作です。」
製品づくりに関わっていた頃は、自分の手掛けた服を着ている人を見ると嬉しかった。 「今は、売れる・売れないではなく、いいもの・満足いくものができると嬉しい。納得のいくものはなかなかできません。だからこそ、簡単にできるようなものではなく、ひと手間かけて、着心地が良く、オシャレで、少し違うものをつくりたい。そういう自分で納得いくものをつくるのが、やっぱり面白いわね。」
自らのため、あるいは大切な誰かのためであろうとも、服づくりの純粋な喜びとは、それを着る瞬間のときめきにこそ、凝縮されている。

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#お問い合わせ先

日本ファッションクリエーター協会
〒235-0042 横浜市磯子区上中里町420-3
電話番号:045-771-9234
公式ホームページ:https://jfca1983.jp

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