「女性で活躍している職人っているのかな?」「子育てしながら職人の仕事って出来るもの?」そんなギモンをお持ちの方も多いはず。そこで、Tokyoものづくり部開設のシリーズとして、都内でものづくりを行う企業を訪ね、現場で活躍する若手からベテランの方々に仕事の内容や魅力などについてインタビュー&撮影を実施。シリーズ第二弾となる今回は、およそ60名の左官職人のうち、10名を超える女性左官職人が活躍する文京区の有限会社原田左官工業所様にて、2児の母ながら一級左官技能士として活躍する福吉奈津子さんにお話しを伺いました。
家では妻であり、2児の母。
会社では、左官職人17 年目。
手に職をつけたくて建築業界に飛び込んでから、今年で入社17年目。当時は、左官という言葉さえよく分からないくらい、左官業のことは何も知りませんでした。ですが、原田左官工業所は女性の職人も多く、男性の職人たちとの人間関係も良好なので、特に不安はありませんでしたね。現在は、夫と2人の子供との4人暮らし。家族も応援してくれているので安心して働けています。
壁塗り、床仕上げなどを
コテを使って行うのが左官の特徴です。
会社では、飲食店やアパレルなどの店舗や住宅の左官業を主に請け負っています。左官職人の仕事は、建築現場で壁塗りや床仕上げ、ブロック積みなどを行うこと。基本的にコテを使って塗るというのが左官の特徴です。とはいえ、現場ごとに使う道具は幅広く、作業内容もさまざまです。先日まではハウスメーカーの展示場の現場で、壁や天井、床など合わせて200㎡ほどのスペースを漆喰で塗っていました。
仕事と家事に追われながらも
なんとか1級左官技能士に合格!
「1級技能士です」と言えると、お客様に対する信頼も高まることから、2019年に左官技能士1級に挑戦し、資格を取得しました。高い技能を求められるうえに、主婦として家事もこなさなければならないので、とにかく勉強や練習の時間を確保するのが大変でした。
座学は空き時間にできても技能面は難しいので、日曜日に出社して、試験に必要な作業を制限時間内で終えられるように繰り返し練習していました。試験では塗り方の工程なども決められているため、完成できれば良いわけではないのです。だから経験して覚えるしかありません。
会社では資格取得を積極的に奨励していることもあり、先輩たちから試験対策の指導を受けられるので、それがとても役に立ちました。
見習い期間から現場に出るまで
時間をかけてじっくり学んでいきます。
うちの会社の場合は、見習い期間が4年間あります。基本的には、一人で現場に行ってお客様を満足させられるようになるのが目的ですから、そのくらい時間をかけて学んでいきます。また、業界で運営する学校に数ヶ月通って、さらに座学や実技を教わります。その後は、先輩に付いて現場に行き、半年間ほどいっしょに働くというのが、現在の新人教育の流れです。自分で塗れるようになるまで、最初のうちは、材料を混ぜ合わせたりする準備作業が中心になりますね。
職人の腕が試されるから
やりがいが大きいです。
最近の建築現場では、左官も、大工や塗装などの分野でも、女性の職人さんが増えてきています。個人的には、その中でも左官業が一番面白いかなと思っています。 なぜなら、左官職人はマンションのエントランスや店舗でも、空間のメインとなる壁などを頼まれることが多いんです。「大事なスペースだけは塗装や壁紙でなく、左官屋さんにお願いしたい」と。職人の腕が試されるからやりがいも大きいです。
壁紙やタイルのように既存の物ではなく、左官職人は自分たちで素材を練って塗っているので、自分の手で作ったものが完成したという達成感もあります。何より、凹凸や色使いで表現を変化させたり、人の手で作った質感を残すことができるところは左官職人ならではですよね。時代とともに素材も進化してどんどん新商品が登場し、流行も変わるので飽きないのも魅力です。
きちんと技能を身につければ
男女関係なく活躍できる仕事です。
左官職人として確かな技能を身につけ、仕事ができるようになれば、男女の違いは関係ありません。自分の頑張り次第で平等に評価してもらえるので、モチベーションにもつながります。
また、職人同士で共通の技術を持っているから、お休みの要望にも対応してもらいやすいところがあります。急な子どもの病気や学校行事などの際は助かりますよね。私は見習い期間中に出産したのですが、出産後しばらくは週4日勤務にしてもらっていました。子育てするうえで、そうした風土や制度があるのは本当に有り難いです。その意味でも、女性が活躍できる仕事だと思います。
知ってる?左官の仕事のキホン
左官の仕事は大きく2つに分かれます。
●野丁場(のちょうば):大規模建築やビルなどの下地づくりが中心
●町場(まちば): 店舗や一般住宅などの塗り壁の仕上げが中心
原田左官工業所は、町場を中心とした左官業務を請け負う会社です。
野丁場も町場も、ともにコテを使って作業を行うことは共通しているものの、作業内容は異なります。
町場の場合は、漆喰や珪藻土、モルタルなどの素材によって壁や床などを仕上げ、独特の模様や凹凸などで質感を表現する機会も多くなります。
その点が、大規模建築の下地づくりの精度を追求する野丁場とは違う特徴です。
社名 |
有限会社原田左官工業所 |
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本社所在地 | 〒113-0022 東京都文京区千駄木4-21-1 ハラダビル |
連絡先 | TEL: 03-3821-4969(代表) FAX: 03-3824-3533 |
主な業務内容 | 大規模な店舗左官から住宅のリフォームまでの左官工事全般や、タイル・防水・組積工事。 |
ホームページ | 原田左官工業所のHPへ |