若者が全国から集まり、日頃から訓練して身につけた「ものづくり技能」を競い合う大会、「若年者ものづくり競技大会」が8月に愛媛県で開催されました。限られた時間の中で技を見せる、それは、だれにとっても大きなチャレンジです。今回は、「挑戦!若年者ものづくり競技大会」と題して、東京都代表選手として出場された東京都立職業能力開発センターの皆さんの経験と感想を、2回シリーズでご紹介します。
第16回「若年者ものづくり競技大会」
~YOUTH Skills Competition2021~
「若年者ものづくり競技大会」は、職業能力開発施設や工業高等学校などで習得中の若者(原則20歳以下)のうち、企業に就業していない方を対象にした大会です。競技内容は、メカトロニクス、旋盤、電気工事、建築大工、ITネットワークシステム管理など15種類となっています。各都道府県の代表者として330名もの選手が参加しています。
第16回 若年者ものづくり競技大会の概要
日程 | 令和3年8月4日(水)・5日(木)一部の職種は先行して実施 |
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会場 | 愛媛国際貿易センターほか |
職種 | メカトロニクス、機械製図(CAD)、旋盤、フライス盤、電子回路組立て、電気工事、木材加工、建築大工、自動車整備、ITネットワークシステム管理、ウエブデザイン、業務用ITソフトウエア・ソリューションズ、グラフィックデザイン、ロボットソフト組込み、造園 |
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機械・電子・情報工学を融合した
新しい技術の職種「メカトロニクス」
「メカトロニクス」は、「メカニクス(機械工学)」、「エレクトロニクス(電子工学)、インフォマティクス(情報工学)」の3つの分野から成り立つ新しい技術です。工場の製造ラインにおいて、製品の高度な品質管理や多品種少量ロットの生産管理などに必要な技能です。
「メカトロニクス」競技は、実際の生産現場を想定して、2人1組のチームで、知識と技術とチームワークを競います。当日発表される課題に対して協力して解決の方法を考え、生産設備を改造するととともに、製品を確実に生産・検査・搬送するプログラムを作り出し、想定通りに動かしていくことが必要です。
城東職業能力開発センター江戸川校には「メカトロニクス科」(2年訓練)があり、今回その生徒の中から、東京都代表として中山さん、松坂さんの2名が出場しました。
お互いの得意分野で役割を分担。
松坂君のサポートに助けられました。
(中山さん)
お互いの得意分野に合わせ、松坂君はプログラム担当、僕は主に機械担当で、少しだけプログラムのお手伝いもすると決めて大会にのぞみました。当日はとても緊張しましたが、彼がサポートしてくれたお陰で結果的に楽しむことができました。
松坂君とは同い年ということもあり、プログラミングを教わったりしながら関係性を深めていたので信頼関係は築けていました。彼は大胆さと正確さを兼ね備えたタイプで、司令塔的存在なので頼りがいがありましたね。
仕様書通りに機械を動かせるよう
練習では何度も分解して構造を把握。
メカトロニクス競技では、仕様書通りに製品を生産・検査し、特定の場所へ搬送するようプログラムを組み、機械を稼働させる技術が求められます。午前は第一課題、午後は第二課題に取り組みましたが、どちらの課題もクリアできたチームはわずか6校。今回は特に難易度の高い課題だったと思います。
練習を始めたのは、大会の2ヵ月ほど前から。改造部品を組み込む課題に対応するため、機械担当としてあらゆるケースを想定しておく必要がありました。そこで、生産設備を全て分解し、改めて組み立て直すという練習を繰り返しました。ネジ1本の厚さまで覚えるくらい何度も行い、仕様書通りにコンベアや電子回路などを組み立てられるか徹底して見直しました。
将来もこの道に進んでみたい、
という意識がより明確になりました。
他チームの競技者たちは、とにかく機械を組み立てるのが早いという印象でした。でも同時に、「自分も負けてないかな」と思えたんです。僕は、パソコンなど電子機器の組み立てやメンテナンスに興味があるので、将来はその道に進み、今回の大会で得られた経験も活かしていきたいと改めて希望が明確になりました。
チャレンジする後輩へのメッセージ
当たり前のようですが、整理整頓はとても大事。特に機械を扱う場合は、部品や工具の位置を常に把握し、すぐ取り出せるようにしておくことを心がけてください。
周囲のレベルの高さに驚きつつも、
この二人だから安心してやりきれました。
(松坂さん)
メカトロニクス競技は、今大会24校が出場していましたが、周りのチームのレベルの高さに圧倒されました。プログラムを打ち込むのが早く、カスタマイズされたPCや工具などを使っていたり・・・チームで戦う経験が少なかったとはいえ、とても驚きました。
でも、その圧倒されている感じが楽しくもあったんです。だから2人でやりきることができたのかな、と思っています。中山君は細部まで目が届く人なので、仕様書の見落としなどにも気づいてくれて、安心して挑戦することができました。
機械とプログラムが連動するよう
確認し合いながら作業に集中。
大会前の練習では、どのパーツがどのように動くのか、どのセンサーがどう反応するのかなどをエクセルの表にして、プログラムのための仕様書のようなものを作っていました。それを頭に叩き込み、機械やパーツを見なくても常にシミュレーションできるようにしていました。そのお陰で、当日に大きな混乱を招くことはありませんでしたね。
いくら機械が上手に組み立てられても、プログラミングにミスがあれば設備は動きません。機械とプログラムが連動して動かないと意味がないのがメカトロニクスの特徴です。
トータルでの完成度を追求するため、お互いにコミュニケーションを取りながら、工程ごとに作業を確認して進めていくことを心がけました。
卒業後は、プログラムに携わる仕事に。
また大会出場の機会があれば、挑戦したい。
元々プログラミングが好きで、将来は工場の生産ラインの設計などに携われたらいいなぁと漠然と思っていましたが、今回の大会を通じて、よりその気持ちが強くなりました。
こうした大会は自分に足りないことや、それをどう補うべきかといったことに気づきを与えてくれるので、就職した先でも同じような機会が与えられたらまた挑戦してみたいですね。
チャレンジする後輩へのメッセージ
分からないことを、そのままにしないこと。先生に積極的に質問したり自分で調べたりして、すぐに解決することが大切。「とにかくやってみる」という精神で何にでも挑戦してみよう!
ペアでものづくりに挑む経験は、
将来の貴重な財産になるはずです。
(指導担当の先生)
今回の大会の競技職種の中で、二人で協力してものづくりができるのは、メカトロニクスを含めてたった2種類。そんな希少な競技にチャレンジできたことは、大きな意義があったと思います。将来的にも、ものづくりに携わるなら職場のスタッフや職人さんとの連携は不可欠ですから、勉強にもなったのではないでしょうか。卒業後は、好きなことに挑戦し、自分の技術に自信を持てる技術者になってほしいですね。
メカトロニクス科ってどんなことを勉強するの?
メカトロニクスとは、メカニクス(mechanics)とエレクトロニクス(electronics)の造語です。
メカトロニクス科では、「機械」、「電気・電子」、「制御プログラミング」の3つについて勉強します。この科目を勉強すると、二次元及び三次元CADで、図面を作成することが出来るようになったり、ボール盤、旋盤、フライス盤、マシニングセンタなどの工作機械を使って、金属を様々な形状の部品にすることが出来るようになります。また、工具を使って電線を加工し、図面に従って制御回路を作ったり、家電製品などに使われるマイコンという小さなコンピュータで使用されるC言語(プログラミング言語)等の制御プログラムについて学ぶことも出来ます。
これらを身に付けることで、工場の生産ラインや各種自動化機器などに代表されるメカトロニクス製品の設計・製作・保守メンテナンスの仕事に就くことを目指していきます。
組織名 |
東京都立城東職業能力開発センター 江戸川校 |
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学校所在地 | 〒132-0021 東京都江戸川区中央2ー31ー27 |
連絡先 | TEL: 03-5607-3681 |
ホームページ | 城東職業能力開発センター 江戸川校のHPへ |