令和3年12月17日(金)~20日(月)の4日間、東京ビッグサイトを主会場として開催される「第59回技能五輪全国大会」。技能五輪とは、国内の青年技能者(原則23歳以下)を対象に、全42職種の技能レベルの日本一を競う技能競技大会です。今年は、全国各地で選抜された選手が東京に集結し、熱い戦いを展開します。「第59回技能五輪全国大会に挑む!」シリーズ第2回は、とび競技の東京都代表として技能五輪に出場する小山さんが勤める向井建設へ。指導員の山課長にも同席いただき、大会出場の意気込みや練習などについてお話を伺いました。
◆日程:令和3年12月17日(金)~20日(月)※一部の職種は先行して開催
◆会場:東京ビッグサイト 他
◆HP:Tokyo技能五輪・アビリンピック2021について詳しくはこちら
高校時代の敗北をバネに
念願だった全国大会に出場!
僕は高校時代に、建築研究部という部活に所属していました。そこで、とび競技に夢中になっていた際、顧問の先生から「技能五輪の予選に出場してみないか?」と持ちかけられたんです。思い切って出場してみたものの、結果は2位で全国大会への出場は叶わず、とても悔しい思いをしました。
その雪辱を晴らすため、卒業後は、技能五輪のメダリストを多く輩出している憧れの向井建設に入社しました。本気で大会出場やメダルの獲得を目指すようになったんです。ですから、今回、東京都代表に選ばれたときは本当に嬉しくて、すぐ実家の母親に電話してしまいました。
屋根の骨組みの組立から解体まで行う競技。
今は弱点の克服に全力投球!
現在は、予選で経験した自分の欠点克服や過去の課題などをベースにトレーニングしています。例年、競技の課題が発表されるのが大会の約1ヵ月前なので、11月初旬くらいから実践的な練習を開始する予定です。
とび競技では、主に「小屋組(こやぐみ)」という屋根の構造を、長さの異なる単管パイプなどを使って組み立て、最終的に解体・片付けまで行います。
その際、柱や梁は専用器具を使わず目視だけで水平・垂直を計測し、組んでいかなければなりません。この技術が僕はまだ未熟なので、本番に向けてしっかり高めていきたいです。
周りの先輩たちからも「今はスピードより精度を重視しよう」とアドバイスされていますし、上位入賞を狙うには避けて通れないポイントだと考えています。
小屋組とは?
足場板の上に単管パイプや、金具などを組み合わせ固定しながら骨組みを形づくります。その際、柱の垂直・梁の水平は、周辺の建物の外壁のラインなどを参考に目視だけで見極めます。
図面を正確に読み取り、パイプ同士を固定するための金具「クランプ」を設置。柱からの距離を暗記しておくことで、計測と設置の時間短縮につながります。「クランプ」の設置は、場所の正確さだけでなく設置する向きや統一感など見映えも重要なポイントです。
単管を三角形に組み立てる「トラス構造」にすることで、屋根の荷重を支える強度が増します。
若手に頼られる上司を目指したい。
そのためにも、目標は金メダル!
今の僕の仕事は、建設現場で働く他の職人さんたちのために足場を組んだりすること。その人たちから「仕事しやすかったよ」と言ってもらえたときは本当に嬉しいですね。大規模な建築現場で綺麗に足場を組むことができたときなども、満足感は凄く大きいです。
まだまだ知らない技能や知識がたくさんあるので、日々学びながら、後輩たちに頼りにされるような上司になりたいと思っています。そのためにも、まずは技能五輪で金メダルを取りにいきたいです。高校時代からの夢ですし、同世代にどんな凄い人たちがいるのか見聞を広げるのも楽しみですから。
技能五輪を経験することで、
キャリア以上の自主性や技能が身につきます。
(人材育成課長 山 寛さん)
弊社はこれまでの技能五輪で、多くの上位入賞者を輩出してきました。その実績から、近年では小山君のように大会出場を目指して入社を希望する社員も増えています。
そもそも技能五輪への出場を積極的に推進しているのは、入社3年目までの若手の育成が主な目的です。大会に向けたトレーニングを通じ、自分自身で考えて行動する力や安全への配慮、技能の正確性、スピードの向上などを目指しています。
仮に、大会で思った結果が出せなくても、課題に取り組み、克服したという達成感を味わえるだけでなく、技能者としても人としてもトータル的に成長するきっかけになると考えています。実際、指導者と二人三脚で高め合うことで、若手とは思えないほど自主的に動けるようになります。
指導員がしっかりサポートし、
練習だけに集中できる環境も提供。
出場選手には技能五輪専任の指導員が付き、傾向と対策を徹底的にサポート。競技の課題が発表されたら、図面を基にさまざまな角度から検証をします。まず、図面から安全で効率的な組立方法をシミュレーションし、試験施工を行います。それを参考に、社内の技術部で、より詳細な図面を作成してから選手の指導を行います。指導員だけではジャッジできないこともあるため、個別の知見を持った方々の意見も反映し、会社として総合的にバックアップしています。
また、大会直前の約1ヵ月間は、千葉県市川市内の社員寮兼研修施設に宿泊し、通常業務から完全に離れてトレーニングに集中してもらっています。
そうした環境を提供できるのは弊社の強みですね。
指導のポイント
命綱である「フルハーネス型安全帯」は、落下時の安全を想定し必ず腰より高い位置に。
安全対策や高所での作業態度も審査の対象になります。作業後は、組み立ての補助として仮に取り付けた部材や金具を、元の場所にきちんと片付けます。
こういった細かい所も、非常に重要になります。
挑む立場から指導する立場へ。
「育成の連鎖」を生み出して欲しい。
金メダルについては、目標というより「絶対取りにいくんだ」という気持ちで臨んでほしいです。そのくらいでないと、本番を迎える前にどこかで今の自分に妥協してしまうからです。何か辛いことがあっても、一緒に対策を講じて修正しながら、目指す目標がブレないよう向かっていきたいですね。
大会本番では誰もアドバイスしてくれません。ミスをしても自分で考えてリカバリーできるように、今のうちから少しずつフォローする機会を減らすようにもしています。
小山君にはいずれ、現場の責任者となり、1級技能士の資格を取得してもらうだけでなく、後輩の指導・育成にも積極的に取り組んでもらいたいと思っています。彼が育てた若い社員たちが大会へ出場し、その彼らがまた新たな若手を育てていく。そんな育成の連鎖を生み出してくれることを願っています。
向井建設プロフィール
1908年(明治41年)創業。
社会基盤の整備に欠かせない躯体工事業者として、建築・土木・機械土木工事を中心に113年の歴史と実績を誇っています。
どんなに時代が変わってテクノロジーが進化しても、人の力の重要性は変わらないことから、人材育成に注力し、業界を担う高い技術・技能を次世代へ継承しています。
2009年、技能五輪に「とび」の競技科目が新設されて以来、常に上位入賞者を輩出しています。
社名 |
向井建設株式会社 |
---|---|
本社所在地 | 〒101-0041 東京都千代田区神田須田町2-8-1 |
連絡先 | TEL: 03-3257-1301 FAX: 03-3257-1578 |
主な業務内容 | 鳶工事、土工事、機械土工事、型枠工事、鉄筋工事など、躯体の専門工事業を行う。 |
ホームページ | 向井建設株式会社のHPへ |