「ものづくりのまち」「中小企業のまち」として知られる、大田区。3,000以上の工場が集まり、卓越した加工技術を持つ町工場の数も多く、さまざまなものづくりが行われているよ。そんなものづくりのまちで、基盤技術をもとに、新たにメーカーとして製品開発にも挑戦している精密部品加工会社の株式会社極東精機製作所さんを訪ね、町工場の可能性についてお話を伺ったので紹介するね。
町工場最前線
大田区にある町工場の多くは、金属を材料に「切削」「研磨」「溶接」「曲げ」などの加工技術を駆使した製品づくり、部品づくりを手がけているよ。こうしたものづくりに必要な基本技術を組み合わせて、オリジナルの製品を開発したり、デザイナーやクリエイター、ベンチャー企業などと共創し、メーカーとしてプロダクトの販売に乗り出したりしている町工場もあるんだ。豊富な経験と実績に裏打ちされた技術があるからこそ、その幅を広げ、組み合わせることで、新しいかたちのものづくりに挑戦できるんだね。
高精度な加工部品
高精度な加工技術の蓄積
1968(昭和43)年の創業以来、精密部品加工会社として産業用設備の部品加工を手がけてきた、極東精機製作所。多様な旋盤加工技術を有し、特にNC旋盤機を用いた加工では、機械に独自の改造を加えることで、高精度な旋盤加工を可能にしているよ。油圧機器や半導体部品、電車の車両関連部品をはじめ、独自に開発した治具を利用するクランクシャフト加工など、難度の高い加工を得意としているんだ。こうした既存事業に加え、スタートアップ企業との共創による超高速3Dプリンターの開発やプロダクトデザインを含めた製品開発を手がけるなど、新たなものづくりにも挑戦しているよ。
美容機器「Face Pointer」
転機は、美容機器開発
転機となったのは、美容機器「Face Pointer」の開発。これは、ペン型の美顔器で、顔の筋肉のコリをほぐし、筋膜の癒着を改善することで顔のたるみやむくみ、フェイスラインの引き締め効果が期待できるという製品なんだ。販売会社からの依頼で、メーカーとして企画開発に関わり、設計図も仕様も決まっていない段階からスタート。12月のクリスマス商戦に間に合わせるため、3カ月で量産ラインに載せなければならない厳しい状況だったそうだよ。先方のイメージ図は実現が難しい形状だったことから、加工可能な形を提案しながら試作を繰り返し、先端部の太さ、丸み、バネの耐久性を100万回保つようにするなど、要望に応えながら工夫と改良を重ね、現状の形に近いものになったんだ。高精度の加工技術があったからこそ、微細な力加減をコントロールし、ピンポイントで正確にアプローチできる製品に仕上げることができたんだね。
左:Triple Rod
右:Bath Combo
加工が難しい精密部品
ほとんどのパーツが精密部品なので、加工はとても難しいんだ。例えば、先端部の「Triple Rod」は、 3本の支柱と台座をそれぞれ削り出し、圧入して取り付けるよ。そのための圧入機は自社で製作しているんだ。その他、本体に装着することで安定性を高め、お風呂での使用を可能にするアタッチメント「Bath Combo」は、先端部のロッドと持ち手部分をつなぐコネクタパーツ。防水仕様なので、加工には特に高い精度が求められるよ。
ピンクゴールドメッキを施した先端部
細部へのこだわり
先端部はステンレス製で、ピンクゴールドメッキを施し、金属アレルギーの人にも対応しているよ。さらに、その上から樹脂コーティングで二重にコーティングすることで滑りを良くしているんだ。初期型ではコーティングしても、バネの擦れで音が発生していたんだって。でも、改良型では、材質を変えることで直接バネが本体に触れないよう工夫し、音の発生を抑えたんだ。本体は高級万年筆のような素材感に仕上げるため、ボディ表面に焼き付け塗装を施しているよ。アルミを削った後に特殊な表面処理をしてから、塗装工場に送り、独特の落ち着いたくすみカラーで金属のような質感に仕上げているんだ。この工場でしかできない特別な塗装で、塗装後は、組立工場に送られ、製品として組み上げられるんだ。
株式会社 極東精機製作所 代表取締役社長 鈴木亮介さん
祖父が創業、父が二代目を継ぎ、私で三代目です。祖父が生前、「部品加工屋で終わりたくなかった」と話していたのを思い出し、その思いを継ぐために、美容機器の開発依頼を引き受けました。町工場として培ってきた技術をベースに、独学でデザインや設計を学び、要素技術(※)の幅を広げたことで、プロダクトデザインも手がけられるようになり、商品開発から製造、量産まで一貫体制で対応しています。金属加工を根幹とした既存事業を軸に、これまで培ってきた技術力を生かしながら、新しいものづくりにチャレンジしたいという中堅企業をサポートしています。近隣の高等学校から積極的にインターンシップを受け入れており、卒業後に入社してくる生徒が増え、次世代を担う若い人材が育っています。
初代の目標だったメーカーとしての夢を実現し、爪痕を残したい。最終的にはデザイナーと一緒にものづくりをして海外展開を目指したいと考えています。
※要素技術:製品開発に必要な基本的な技術のこと。

企業名 | 株式会社 極東精機製作所 |
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所在地 | 東京都大田区南蒲田2-19-4 |
連絡先 | TEL:03-3734-6461 |
主な業務内容 | 大型旋盤加工/高難易度加工/斜め穴/5軸加工/3Dプリンティング/デザイン・設計 |
ホームページ | 株式会社 極東精機製作所のHPへ |