左官技能の日本一を競う、最終決戦 catch
#110

第50回全国左官技能競技大会

左官技能の日本一を競う、最終決戦

リポーター
ものづくり部 部長 わざねこ

鏝(コテ)を使って、漆喰や土、モルタル(セメントと砂と水を混ぜ合わせた建築材料)などを建物の壁や塀、床などに塗り上げる職人「左官」。その左官技能の向上と次世代への継承を目的とした「第50回全国左官技能競技大会」が、2025年9月21日(日)〜23日(火)の3日間、東京都立城東職業能力開発センターで開催されたよ。わざねこが会場の様子をリポート、東京都左官組合連合会の阿嶋一浩会長にもお話を伺ったので、併せて紹介するね。

全国左官技能競技大会とは?

全国左官技能競技大会とは?

1,400年以上の歴史と伝統を有し、時代の変遷とともに建築工事に貢献してきた、左官。その技能を次世代に継承し、建築技術の変遷に即した技術向上と有能な技能士の確保、建築業界の発展への寄与を目的に開催されるのが、「全国左官技能競技大会」なんだ。全国10ブロックから選抜された最大15名の高い技能を有する選手たちが3日間にわたり、その技を競い合うよ。第1回大会から今年で50回目を迎え、これまでに延べ1,448名にも及ぶ優秀な技能者を輩出している左官技能の最高峰の競技会なんだ。

課題テーマは、左官神門

課題テーマは、左官神門

今年度は、浅草寺の総門である「雷門」(正式名称:風雷神門)をモチーフとし、赤い大提灯に「左官」の文字をあしらった、これまでにない斬新な製作課題だよ。「塗り壁の良さ・安全性・早く正確に仕上げる緻密さ・伝統工法による高度な技能」といった左官技術が凝縮された高度な内容なんだ。3日間の競技日程で全体の作業時間は21時間20分。作業は5工程に分けられ、それぞれ制限時間内(第1工程:6時間/第2〜4工程:各4時間/第5工程:3時間20分)に、指定された作業を優先しながら仕上げていくよ。

審査ポイント、いろいろ上:リシンかき落とし仕上げ
左下:左袖壁中塗り
右下:洗い出し

審査ポイント、いろいろ

わざねこが訪れたのは、大会2日目。午前中の第2工程は、左袖壁に虫籠窓(むしこまど)といって漆喰の壁に虫籠のような細かい格子をつけた窓を施工する「左袖壁中塗り」をはじめ、下地を塗って固まる寸前に水で洗い流し、砂利の目を浮き立たせる「洗い出し」、下地に砂などの材料を塗って表面が固まる前にブラシなどで引っ掻く「リシンかき落とし仕上げ」など、さまざまな左官技術が織り込まれているんだ。午後からの第3工程は、午前の作業の仕上げに取り掛かり、競技者各自がそれぞれの段取りを工夫しながら、進めていくよ。審査員は、スタート時点から作業をすべてチェック。作業中の道具や材料の扱い方、作業場の状態、鏝ムラや壁肌の汚れといった美観のチェック、寸法の精度など、細かいチェックポイントがいろいろあるんだ。仕上がりだけでなく、現場で作業が手際よくきれいに進められているかも含めて、重要な審査ポイントになっているよ。

水と泥の職人

水と泥の職人

左官はスピードといわれるように、乾いてしまうと仕事にならないんだ。競技者は、材料が十分に水分を含んだ状態で、手際よく塗り進めていくよ。上から下に塗るのも、水が下に落ちていくから。大切なのは水分で、水持ちをよくしながら、水気が引かないうちに仕上げていくんだ。「水と泥の職人」という意味で、左官のことを「泥水士(でいすいし)」と呼ぶ人もいるそうだよ。水分の加減をコントロールしながら仕上げていく大胆で繊細な仕事なんだね。
2日目の工程を観戦して、どの選手が優勝に近いのか、わざねこにはわからなかったよ。作業の進め方や塗り方、各部の仕上がりも含めて、競技者それぞれの個性が表れていて、課題テーマの「左官神門」が最終的にどんな仕上がりになるのか、すごく楽しみだよ。

競技会での経験が、大きな財産になっていく。

雷門をイメージした課題について、日本左官業組合連合会の石川隆司会長が「雷門は942年の創建以来、幾度となく焼失しますが、そのたびに不死鳥の如く蘇りました」と説明しているように、蘇った雷門に重ね、左官業界を再興していこうという想いが込められています。今回の課題は、ムラなく美しく壁面を塗る技術だけでなく、正確に寸法を割り出して施工する技術、鏝の技など、伝統的な建築手法や左官の歴史的な技能も含まれています。一方、表面を滑らかにせず、わざと漆喰に鏝波を立てて凹凸をつけて、多孔質に仕上げることで調湿効果を高め、デザイン的にも美しい現代漆喰のセンスも問われます。こうした多彩な技術が織り交ぜられた課題なので、相当レベルの高い大会といえます。競技者にとっては、ここで競うことが、何ものにも代え難い経験になるはず。お互い切磋琢磨する中で生まれた絆は、やがて仕事を助け合う仲間、全国につながるネットワークとして大きな財産になるでしょう。
左官職人は、子供が泥団子で遊ぶのが好きなのと同様、塗っている瞬間が楽しくて、そこに喜びや達成感を感じます。左官が扱うのは、泥と水。全て自然のものだからこそ、人は根源的な心地よさを感じるのでしょう。土壁は、環境にも人にもやさしい。土壁が少なくなったから、人は心を病んだのではないかという名人もいます。左官の仕事は、人の心の健康を守ることにつながっているのかもしれません。

競技会での経験が、大きな財産になっていく。東京都左官組合連合会会長
阿嶋 一浩さん

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