令和3年12月17日(金)~20日(月)の4日間、東京ビッグサイトをメイン会場として「第59回技能五輪全国大会」が開催されました。これは国内の青年技能者(原則23歳以下)を対象に、全42職種で技能レベルの日本一を競う技能競技大会です。今年は、全国各地で選抜された選手が東京に集結し、熱い戦いを展開しました。今回は、「建築大工」職種の東京都代表として金賞に輝いた関根さんが所属していた東京建築カレッジへ。教務部長の西岡先生にも同席いただき、金賞にかけた思いや今後の目標などについてお話しを伺いました。
最後の最後で名前を呼ばれ、
念願だった金賞を受賞!(関根さん)
敢闘賞、銅賞、銀賞・・・表彰式の映像を見ながら、いっこうに自分の名前が出てこなかったのですが、最後の最後にやっと呼ばれて思わずガッツポーズをしていました。本当に嬉しかったです。昨年の出場経験も功を奏し、本番で周囲の音などにペースを乱されることがなかったのが良かったですね。作品についても、全体的な見映えは合格点だったのかな、と思います。ただ、柱が土台からわずかに浮いてしまったところは反省点として残りました。
現在のキャリアは、大工になって4年目です。まだ見習いの立場なので、何とか自分の強みとなる実績がほしくて大会出場を希望しました。練習を通じて技術を高められると思いましたし、全国の職人さんたちと交流を持てるチャンスという気持ちもありました。
先輩に驚かれるほど練習に没頭し、
2カ月で22台も課題作品を製作。
実は昨年の大会では、カンナ掛けでミスをして入賞を逃していたので、そこは練習から気をつけていました。最も注力したのは、最後の組立ての工程です。5つの木材が複雑にからむ場所などもあり、わずかな狂いで組めなくなるほど繊細で複雑な作業だからです。過去のメダリストである高田先輩からも、多くのアドバイスをもらいながら反復して技術を磨きました。気がついたら、2カ月の練習期間で22台の課題作品を製作していて、さすがに先輩にも驚かれましたね。
まだ大会が終わって間もないですが、少しずつ自分に自信が持てるようになってきたと感じています。実際の現場でも、他の職人さんたちの作業に対して、自分の考えや意見を積極的に伝えられるようになってきました。
大工の伝統技術が好きなので、
もっと腕を磨き身につけていきたい。
実際の現場では、技能五輪で求められるような伝統的な技術を使う仕事はほとんどありません。ですが、木の可能性を最大限に引き出してくれる手刻みの技術が好きなので、もっと身につけていきたいと考えています。同じ木に見えても、木目や反り、年輪の太さなどはそれぞれ違います。その一本一本と向き合い、どう仕上げるかを考えながら取り組むのが楽しいですね。
そうした技術は東京建築カレッジのような学校で学ぶことができますし、何よりものづくりが好きな人なら大工は魅力的な仕事だと思いますので、多くの方に興味を持ってもらえたら嬉しいです。目標はたくさんありますが、今は二級建築士の資格取得が最優先です。親方の仕事を見て学び、一日も早く一人親方になりたいと思っています。
プロの大工でも製作困難という課題「多面体小屋組」
建築大工職種の課題で製作する多面体小屋組とは、木造住宅の屋根を模した作品です。これは、現職の大工でも製作困難なほど高度なため、大会に向けた厳しい訓練が必要になります。
建築大工の競技は、現寸図づくりから部材の木削り、墨付け、加工、組立てに至る基本・応用技術を競い合います。
課題があまりに複雑なため、練習の段階で各木材の寸法や勾配を割り出し、すべてを暗記。そのうえで作業しなければ、とても時間内には仕上げられない課題です。
本番の作業時間は2日間で合計12時間。大会直前には、当日と全く同じタイムテーブルで練習し、時間配分を身につけました。
「受賞が決まったとき、お世話になった高田先輩から『良かったね、おめでとう』と泣きながら言っていただけました。
本当に嬉しかったです、感謝しています。」と微笑む関根さん。
受賞後の現在は、現場で「大工さん」と呼ばれる度、自分が職人なんだという喜びを以前にも増して感じているそうです。
大工本来の技術を学び、
猛練習の末の金賞受賞に感動!
(教務部長 西岡さん)
現代の建築現場では、すでに製材された木材を組んでいくのが一般的で、競技で求められる伝統の技術や道具にふれる機会は激減しています。そんな中、今回出場した関根くんは本校で大工本来の技術を修得した卒業生なので期待していました。 とはいえ、特に最後の組立て作業はとても難題のため「どこを調整すれば最小限の減点で抑えられるか」を自分で分析できるよう練習で徹底していきました。大会の2カ月前から本校を練習場とし、朝から晩まで自分を追い込む彼の姿を見てきたので、金賞受賞の知らせには涙が止まりませんでした。
この経験に慢心せず成長し
将来は指導者になってほしい。
元々彼は機械科の高校出身で、入校当初も特別な技術を持っていたわけではありませんでした。誰よりも練習熱心だからこその結果だと思います。大会が終わるとすぐ技能検定試験にも取り組むなど、本当に頭が下がりますね。
本校では技能五輪でメダルを受賞した先輩たちが多く、現在も大会時期にはOBとして選手のサポートに駆けつけてくれます。関根くんにはさらに成長していただき、将来的には指導する立場として再訪してもらえたら嬉しいです。
東京建築カレッジとは
厚生労働省所管の、東京都から認定を受けた職業能力開発短期大学校です。「居住システム系建築科」を設置しており、木造住宅の建設における大工の手刻み(ノコギリ・カンナ・のみなどの手道具を使って行う作業)の実習・座学を中心に修得できます。働きながら学べることから、生徒は現役の大工職をはじめ、鳶や左官、電気店の職人など多方面に及びます。指導員には、工務店や設計事務所の経営者など建築業界のプロが揃っており、充実した教育体制が整備されています。
学校名 | 職業能力開発短期大学校 東京建築カレッジ |
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学校所在地 | 東京都豊島区池袋1-8-6 |
連絡先 | TEL:03-5950-1771 / FAX:03-5950-1774 |
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