金属を加熱し溶かして接合する、溶接。アクセサリーや電子部品をはじめ、自動車、建築資材、さらには航空機、ロケット製造までも担う重要な加工方法として、あらゆる分野のものづくりを支えています。東京都立城東職業能力開発センター溶接科で学び、第8回若手人材育成溶接コンクールで最優秀賞に輝いた中村翠さんと、指導に当たられた有村昌樹先生に、溶接の魅力と奥深さ、その可能性について伺いました。
第8回若手人材育成溶接コンクール 最優秀賞受賞
Creative Works 溶接士 中村翠さん
溶接にとって、いちばん大切なこと
コンクールの際は、競技直後、自分の中では“失敗しちゃったな” という感じがあったので、結果を聞いた時は正直、信じられませんでした。溶接内部を調べる超音波探傷試験の結果が良かったので、以前、先生から教わった「きれいに仕上げるのは大事だけれど、溶接でいちばん大切なのは、完璧な溶け込み。欠陥なく強度が保たれていること」という溶接工としての要の部分がしっかりクリアできたのが、いちばん嬉しかったです。 溶接は熱を加えるので、金属には必ず歪みが生じます。でも、最終的な仕上がりに歪みは許されません。一つ一つの工程を丁寧に仕上げ、毎回歪みをとるしかない。それは競技においても同様です。常にきめ細かく神経を使い、時間が許す限り、丁寧な作業を心がける。小さな気づきがあるほど、仕上がりの精度は向上します。それを繰り返す先に、思い通りに仕上がる手応えや充実感があります。
アクセサリーから宇宙開発まで
もともと一般企業に勤めていましたが、出産を機に離職し、その後、長く働けるよう手に職をつけたいと考えました。ハローワークを訪ねた際、東京都立城東職業能力開発センターを知り、溶接と出会いました。溶接は、アクセサリーから宇宙開発まで、幅広いものづくり分野を支える技術で、可能性を感じました。最初は、これまで自分が関わってきたことと全く違う世界に戸惑い、溶接技術だけではなく、図面の読み方や材料の知識、工具も覚えなければならず、焦りました。でも、溶接を学ぶうちに、毎回、同じようにやっても結果が異なるし、少し上手くなったと思っても失敗する、課題をクリアしても、次の課題が見えてくる、そんな終わりのない奥深さに魅力を感じるようになりました。課題と向き合い、考える。その過程が次の結果につながっていく、そこに面白さを感じます。
溶接で、人生が変わる!
溶接に出会ったことで、自分にもこんなに夢中になれるものがあったのかと驚くくらいのめり込み、今は180度、人生が変わりました(笑)。勉強して、もっと知識と技を磨き、人のために役立てるよう、車椅子などの医療器具もつくってみたいと思います。溶接は女性が活躍できる分野なので、チャレンジしやすい環境づくりにも協力していきたいです。年齢や性別、立場に関係なく、いろいろな人にチャレンジしてほしい。きっと世界が変わります。
東京都立城東職業能力開発センター 溶接科
有村 昌樹 先生
溶接は、ものづくりを支える重要な技術
溶接は、ものづくりを支える重要な技術の一つです。溶接の材料は主に鉄、ステンレス、アルミニウムなどですが、金属によって溶け方が異なり、使う機械も違います。代表的な溶接として、「被覆アーク溶接」、「半自動アーク溶接」、「TIG溶接」の大きく3種類がありますが、溶接科では、こうした溶接法の基礎知識や基本技能、図面の見方、基礎作業、安全教育、機械の使い方などを学びます。
考える溶接
溶接の上手下手は、手書き文字同様、一見してわかります。溶接ビード(※盛り上がった溶接痕)の仕上がりがきれいかどうかは一目瞭然で、その人の成長が目で実感できます。溶接では、探究心や問題解決力が重要です。指導でアドバイスはしても、最終的には、その人自身が溶接と向き合っていかなければなりません。一人で溶接と対峙した時に、どうすればいいのか、何が悪いのか、自ら考えて発見していかなければ、技術は自分のものになりません。溶接は常に同じではなく、現場の状況、材料や条件によって変化します。板が薄ければ、穴が開きやすいし、状況に応じた判断を自分でしなければなりません。常に「考える溶接」を心がけること。そうしなければ、臨機応変に対応する力は身につきません。
自らの成長が、モチベーションにつながっていく
金属を溶かす溶接作業は、暗がりの中で行うので、全体の状況が把握しづらく、最初は誰でも、ミミズが這ったような仕上がりになります。でもそこで、なぜうまくいかないのか、どうしてこうなるのかを突き詰めて考えていくと、そこにはちゃんと理由があり、改善すれば、仕上がりは一変します。目の前の結果が自分の実力のすべてで、身についた技能です。自分の成長が明確にわかる点が溶接の魅力であり、自らの技能探求に向けたモチベーションにもつながっていきます。
どんな仕事も同じですが、まずは楽しむこと。そして、楽しみながら、人の役に立つものをつくれるのが、ものづくりのやりがいであり、面白さです。溶接は、可能性にあふれた分野。仕事に誇りを持って、常にチャレンジし続けていくことで、自身の可能性も限りなく広がっていくと思います。
溶接科ってどんなことを勉強するの?
金属を切断して、形を造り、組立て、溶かして付ける溶接技術は、金属機械製造やビルの建設、レインボーブリッジなどの橋梁、航空機やロケットの製造など、さまざまなものづくりを支える、無くてはならない重要な技術です。溶接科では、鉄をはじめステンレス鋼やアルミニウム合金などの金属の溶接に必要な基本の知識と技能について学びます。
ガス溶接やガス切断、各種アーク溶接、レーザ溶接、プラズマ切断などの技能を駆使し、金属加工業に不可欠な溶接技能者は、工場内溶接から、建築金物、建設現場溶接まで、あらゆる「ものづくり」を行っている企業から求人があります。

学校名 | 東京都立城東職業能力開発センター |
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学校所在地 | 東京都足立区綾瀬5丁目6-1 |
連絡先 | TEL: 03-3605-6140 |
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