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若い人材で、めっき業界を盛り上げていきたい。 catch
#48

めっき加工

若い人材で、めっき業界を盛り上げていきたい。

株式会社カワジュンインダストリー
相﨑 優佑さん

ジュエリーや時計、自動車の内装部品、装飾建築金物などに使用される、装飾めっき。美しさと耐久性を兼ね備えた国内有数の装飾めっき加工の専門工場で、塗装とめっき加工のスペシャリストとして活躍する相﨑優佑さんに、お話を伺いました。

めっき加工との出会い

めっき加工との出会い

工業高校の電子科で、電気と情報関連の基礎を学びましたが、めっき加工については、何も知りませんでした。たまたま1つ上の先輩が入社していた縁で会社のことを知り、知人がいる環境なら、安心して仕事に取り組めると思い、当社への就職を決めました。電気めっき加工は、電気分解という原理を利用して、溶液に溶かした金や銀、プラチナなどを製品の素材表面にめっき膜として付着させる加工技術です。当社が手がける「装飾めっき加工」は、見た目の美しさに加え、素材の表面に高い耐久性を兼ね備えためっきを施す加工方法で、建物の扉などのハンドルレバーや引手といった装飾建築金物や自動車の内装部品など、日々の暮らしの中で手に触れる多種多様な製品を手掛けています。

電気めっき加工の流れ

  • ①電解脱脂作業

    ①電解脱脂作業

    油脂を除去する

  • ②水洗作業

    ②水洗作業

    上水で洗う

  • ③下地めっき

    ③下地めっき

    素地の上に銅めっきを施す

  • ④中間めっき

    ④中間めっき

    銅めっきの上にニッケルめっきを施す

  • ⑤仕上げめっき

    ⑤仕上げめっき

    最後、仕上げめっきを施す

  • ⑥乾燥

    ⑥乾燥

    乾燥させる

  • ⑦塗装

    ⑦塗装

    塗装する

現場経験後、めっき学校へ

現場経験後、めっき学校へ

身体が小柄で華奢だったことから、体力的に現場作業は難しいだろうとの判断で、最初は一般作業に配属され、仕上がった製品を検品する検査業務に携わりました。その後、技術作業の現場に配属となり、めっき作業で自動車用部品を担当、下地から仕上げまで、すべての工程に携わりました。自動車用部品は扱う色数が少ないのですが、膜厚(めっきの厚み)やキズなどの検査基準が厳しく、高いクオリティが求められます。めっき工程がひと通りできるようになったところで、塗装担当に抜擢され、静電気の力で塗装する静電塗装の担当になりました。同時に、東京都鍍金(めっき)工業組合高等職業訓練校(金属表面処理めっき科)に通い始め、1年間、業務と並行しながら、めっき加工の基本、薬品に関する知識と取扱方法、実践的な技能、素材に関する知識などについて学びました。

理由を知ることで、面白さが深まっていく

理由を知ることで、面白さが深まっていく

初めてのめっき作業の際、金属を液体に入れると、瞬間的に色が変わる様子がとても印象的でした。めっきの膜厚を確保するには、製品の素材や形状、大きさ、厚みに応じて電気の量(流す電流と時間)やかけ方が変わるので、試行錯誤が必要です。めっきの訓練校に通うまでは、“なぜ、そうなるのか”という理屈を理解していなかったので、単に言われた通りに作業しているだけでした。知識や技能を身に着つけた今は、製品の表面積に対して、どのくらい電流・電圧をかければ、どの程度の膜厚が確保できるか、そのメカニズムを理解しているので、きめ細かい工夫ができるようになりました。ちょっとした加減で、仕上がりが変わるので、その理由を追求していくところに、仕事の面白さ・奥深さを感じます。

めっきと塗装のスペシャリストとして

めっきと塗装のスペシャリストとして

現在、めっきと塗装の工程は、それぞれラインごとに分業化されており、両方の工程を経験したスペシャリストは、当社では私一人です。今後、機械を導入するとなると、めっきと塗装の一連の工程に関する知識・技術・経験知が必要になります。製造現場の将来を見据え、機械化に対応していくためには、すべての工程を修得し、しっかり対応できる人材を育成していく必要があり、私が先陣として学んできました。

めっき業界を盛り上げていきたい

めっき業界を盛り上げていきたい

めっき加工では、さまざまな薬品を扱います。もちろん扱い方を間違えば、危険にもつながるので、覚えることはたくさんありますが、いろいろなことを覚えれば覚えるほど、それが自分の知識・技能として積み重なり、仕上がりの精度や品質の向上にもつながっていきます。知識と経験が自分のものになってくところに手応えを感じています。今後は、めっきの技能検定2級を取得し、毒物劇物取扱責任者の資格、金属塗装の技能検定にも挑戦したいと思います。めっきの世界は若い人が少ないので、これから自分たちの世代の人材がどんどん増えて、めっき業界を盛り上げていけたらいいなと思います。

暮らしの身近な存在―めっき加工

めっきは、生活用品をはじめ、自動車や機械の部品、電気機器の部品や回路基板など、私たちの身の回りのあらゆるものに使われています。「塗装」が塗料の皮膜で覆うのに対し、金属皮膜で表面を覆うのが「めっき加工」。装飾性や錆・腐食を防ぐ耐食性、電気伝導性や磁気特性、耐熱性といった機能性の付加などを目的としており、さまざまな種類があります。その中でも、水溶液中に電気を流し、金属の皮膜を製品素材に析出させる「電気めっき」の技術は、素材によって手法が異なります。めっき加工は一見、簡単そうに見えますが、体力的・精神的な能力の高さが求められる大変な作業です。

暮らしの身近な存在―めっき加工左:加工前
右:加工後
社名 株式会社カワジュンインダストリー
本社所在地 東京都葛飾区四つ木5-6-24
TEL 03-3693-2131
主な業務内容 金属へのメッキ処理の請負
ホームページ 株式会社カワジュンインダストリーのホームページへ

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