人々の移動手段として、社会活動を支える重要な役割を担う鉄道。その鉄道車両の検査・整備の担い手である鉄道車両技術係として活躍する西武鉄道株式会社の松本直之さんにお話を伺いました。
作業のダイナミックさに魅了
子どもの頃からものを作ったり、組み立てたりすることが好きで、高校は工業科に通い、機械工作などを学びました。高校の先生の紹介で鉄道車両の整備を行う株式会社西武車両(現在の西武鉄道・武蔵丘車両検修場)を知り、扱う車両の大きさ、作業のダイナミックさに強く惹かれ、入社を決意。車両機器の分解・細部の点検・組立を行う工場業務に携わっていましたが、業務移管により、西武鉄道に移りました。車両の修繕・重要部・全般検査を担当後、同業他社へ出向となり、工場の作業管理監督、車両の検査業務に携わった後、西武鉄道の南入曽車両所に戻り、月検査班、列車検査班を経て、2023年4月に、現在の玉川上水車両所の月検査班へ異動となりました。
検査ごとに異なる、確認ポイント
車両整備は4種類あり、8年を超えない期間内に行う「全般検査」、4年を超えない期間内に行う「重要部検査」、3カ月を超えない期間内に行う「月検査」、少なくとも10日に1回行う「列車検査」があります。武蔵丘車両検修場で実施される「重要部検査」と「全般検査」は、分解・組立という機械的な検査が中心で、玉川上水車両所で行われる「月検査」と「列車検査」は、通電して機器の動作を確認する検査で、それぞれ見るポイントが異なります。月検査班は11名のチームで、屋根上担当、室内担当、床下担当に分かれ、1日かけて点検整備・清掃を行いながら、車両の状態と機能を検査します。場所によって、消耗の程度が異なるため、見るべきポイントをしっかり押さえないと見落とす可能性があり、写真付きのマニュアル等で確認しながら、確実に作業を進めていきます。
見落とし防止は、声かけで
現在は、月検査班の「台車・モーター担当」のチーフとして、上司と若手の橋渡し的な役割を担っています。進捗を把握しながら、作業がスムーズに流れるよう積極的に声かけを行います。何か一つでも、見落としがあれば、事故につながる危険があるため、気になることがあれば、作業の合間に気軽に声をかけて相談できる雰囲気づくりが重要です。声かけしたひと言が気づきにつながることもあるので、見逃しリスクを少しでも減らすために、積極的なコミュニケーションを心がけています。
小さな気づきを拾う、感覚知
作業者の経験の差は、小さなことに対する気づきにあらわれます。作業中、音の違いで「おやっ」と感じたことで不具合を見つけたり、見た目は変わらないのに、わずかな違和感を覚えたことで小さな亀裂を発見したり、経験を積み重ねることで感覚知が磨かれ、それによって故障や不具合に気づくこともあります。もちろんマニュアル等に検査時のポイントは整理されていますが、全てを網羅できるわけではありません。小さな変化を見逃さないためにも、しっかり経験を積んで整備士としての感覚を磨くことが大切です。
社会活動を支える仕事
車両整備業務は一つ間違えば、電車の運行に影響することもあり、大きなリスクと背中合わせの仕事です。 100%やりきって当たり前。失敗は許されません。そこに難しさがあります。身体を使う仕事なので、暑い夏など、きつい時もありますが、車両がきれいになり、お客様を乗せられる状態になって走り出していく姿を見送る瞬間、手応えを感じます。自分の手がけた車両が、社会活動を支える移動手段として機能している実感をダイレクトに感じられるのは、この仕事の醍醐味です。同時に責任の重さも感じます。純粋に機械好きとしては、整備した巨大な車両がダイナミックに動き出す、その様子を間近に見られるのが、何よりの楽しみです。大きなものを自分たちの手で動かしている実感があります。そこが、この仕事の最大の魅力だと思います。
知られざる電車の動きとは!?
時刻表に掲載されている電車の運行以外にも、実は、一般の人が知らない電車が動いています。点検整備のために車両基地に向かったり、回送列車で始発駅に向かったりなど、見えないところでも電車が動いています。こうした車両のすべての動きを表示した紙状のダイヤがあり、そこには時間軸に沿った電車の動きが網の目のように記載されています。
社名 | 西武鉄道株式会社 |
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本社所在地 | 埼玉県所沢市くすのき台1-11-1 |
TEL | 04-2926-2045 |
主な業務内容 | 西武グループの中核企業として都市交通・沿線事業を担っている。 |
ホームページ | 西武鉄道株式会社のホームページへ |