工作機械を使って金属材料を削り出す切削加工は、精度の高い加工が可能で、自動車や航空機、医療機器、半導体製造装置などの部品製造に利用されている加工方法です。高精度部品の切削加工を手がけ、創業から約70年続く三鎮工業株式会社のチャン・ヴァン・コアさんにお話を伺いました。
精密切削部品の製造を担う
当社は、空調機器や自動車、光学機器、医療機器、半導体設備機器等に関連する高精度精密金属部品の切削加工を専門としています。入社して1年半くらいになりますが、簡単な作業から始めて、ひと通り作業ができるようになり、今ではプログラムの作成から加工作業まで、すべての工程を担当しています。私が扱っているのは、モーター関連の高精度部品をはじめ、エアコンなどに使われる冷媒流量を制御する電動弁などの精密切削部品です。当社は、NC複合自動旋盤をはじめ、測定器や検査機も含め、多数の設備・機器を備えているので、入社してから、さまざまな工作機械の扱い方を身につけることができました。
加工に応じたプログラムを組む
図面を受け取ったら、上司と相談して加工方法を決め、それに応じたプログラムを作成します。プログラムを組む際は、できるだけ短時間で効率よく製造できるよう、材料の削り方を考えます。削る際の深さやスピードなどを考慮しながら、刃物を動かすポイントを図面上の座標として入力していきますが、加工が複雑になるほど、プログラムの指示内容が増えるので難しくなります。前の会社でもプログラミングを学びましたが、当社は製造部品が多種多様で、加工に応じていろいろな工作機械を使用するため、部品と機械設備のことをしっかり理解した上で、先輩たちに教わりながら、プログラミングの方法を習得しました。
上:工作機械に棒材を投入している様子
下:完成品
サンプルの製造から量産へ
プログラムを作成し、段取りが決まったら、加工に適した刃物を選んで工作機械に装着し、金属材料(棒材)を投入してサンプルの加工をスタートします。機械内部で回転する金属材料に刃物を当てて削っていきますが、加工が難しいのは、アルミとステンレス。この2つの材料は切削時に切粉(削りカス)が絡みやすいため、それをしっかり取り除かないと加工に影響が出て、品質が安定しません。でき上がったサンプルを測定し、図面通りの要件を満たしているかを確認後、品質保証部に回し、品質を確認したら量産に移ります。初めて手がける部品の場合、サンプルの製造・確認に1〜2日、そこから量産に入り、注文数に応じて1週間から3カ月程度かかります。その間は機械が稼働していますが、1日に2回、加工中の製品を取り出して測定し、品質をチェックして、問題があれば、すぐに修正します。
チームで解決策を探る
現場のチームは3名体制で、お互いにコミュニケーションを取りながら作業を行っています。仕事でいちばん大切なのは、「ほうれんそう(報告・連絡・相談)」。何かしら問題が起こった時は、上司に報告し、チーム全員で考え、解決策を探ります。みんなと協力しながら、問題に対処できるようになったのは、自分にとって成長した点だと思います。問題解決のための新しいアイデアを考え、それを試してみる時は、仕事の面白さを感じます。これまでいろいろ難しい加工を経験したことで、削り方や工具の選び方を身につけることができました。新しい製品の加工を任され、具体的な削り方を考えたり、刃物を選んで試したりする時は、とても楽しいですね。
興味を持って、現場で覚えていく
工作機械の刃物が新しいものになると、プログラムを見直し、製造スピードの向上を図るなど、現状の加工法をアップデートすることもあります。切削加工の仕事には基礎的な知識が必要で、私の場合は、前の会社で少し勉強していましたが、機械の扱い方、材料や工具に関する知識は、入社後にすべて現場で覚えました。この仕事で大切なのは、興味を持つこと。そこからすべてが始まると思います。今後は、これまで培ってきた経験知を後輩にしっかり伝えながら、将来、製造部のリーダーになりたいと思います。
週末は、ネットで勉強?
週末は、動画チャンネルで加工法の紹介動画を観ながら、知識やノウハウを勉強したり、ネットで検索して使いやすい工具を探したりして過ごします。最近購入した工具でいちばんのお気に入りは、ショックレスハンマーです。叩いた時の反動を軽減する機能を備えており、手首や肘への負担が少ないので使いやすく、現場でも活躍しており、とても満足しています。
社名 | 三鎮工業株式会社 |
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本社所在地 | 東京都羽村市神明台4-10-10 |
TEL | 042-513-0718 |
主な業務内容 | 空調機器、医療機器、光学機器、自動車、小型モーター等に使われる精密小径金属部品の切削加工 |
ホームページ | 三鎮工業株式会社のホームページへ |