さまざまな工程を経てつくられる、革靴。デザイン・設計、木型づくり、パーツの型紙づくり、皮革の裁断、縫製、吊り込み、底付け、仕上げといったそれぞれの工程では、高い技能が求められます。紳士靴製造を手がける有限会社パーレイ・トレイディングの肥後良太さんにお話を伺いました。
手製の靴に衝撃を受けて
19歳の時、自分にはものづくりの仕事が向いているのではないかと思い、いろいろ調べていて、資格雑誌の記事の中で手製靴の専門学校のことを知りました。いつもスニーカーばかりで、革靴を履いたことがなかったので、手づくりの靴があること自体が衝撃でした。それがきっかけで2年間、専門学校に通い、紳士靴製造の会社へ入りました。学校では、ひと通りの工程を学びましたが、実際の現場は分業制で、自ら工程を選んで経験を積み、技術を身につけます。私は「底付け」という靴底をつくる工程を8年担当しました。自分が部署で最年長となり、技術的な限界を感じていた時、同じ職場の人から、起業するから来ないかと誘われ、思い切って環境を変えて学ぼうと決意し、新しい会社へ移りました。
張りから削りまで、一人で担当
当社は、ブランドの依頼で生産するOEM(Original Equipment Manufacturing)製造を手掛けています。靴の製法はデザインや用途に応じていろいろありますが、当社ではグッドイヤーウェルト製法を採用しています。中底のリブという突起部分に、靴のアッパー(上部)と中底、ウェルトという細い帯状の革を一緒に縫い付け、本底と縫合し、ヒールをつけて仕上げます。底付けは最後の工程で、当社では、底を張るところからヒールをつけ、削って仕上げるまで、私が一人で担当します。
毎回、一発勝負
ブランドから依頼があると、靴のフォルムを形成する木型製作を専門の業者に発注し、革などの材料も手配します。でき上がった木型から各パーツの型紙を起こし、それをもとに革を裁断します。ミシンでアッパーを縫い合わせたら、型に密着させて吊り込み、すくい縫いという細い革を縫い付けます。底付けの作業は、ヒールを釘で打ち付け、きれいに削ります。釘は口に含んでから打ちますが、湿らせることで打ち込んだ釘が錆びて抜けにくくなるようにするためです。材料だけでも高価なので、限られた製作時間の中で、失敗がないよう集中して精度の高い作業を心がけます。天然皮革は1枚1枚風合いが異なり、種類や原産地によっても違いがあるため、固さや色の違い、革の調子をみながら、それに応じた作り方をします。毎回、一発勝負。プレッシャーはあります。
試作品を、自ら履いて試す
先輩の手仕事など、現場で見て学ぶことが多く、自分で試しながら最適の方法を探すことで見えてくるものがあります。今、オリジナルの靴を製作中で、まだ売りものの段階ではありませんが、試作品を自分で試し履きしています。木型から作っているので、デザインはもちろん、細かい履き心地までチェックしますが、やはり自分が履くことで気づくことはたくさんあります。ずっと底付けだけを担当してきましたが、今はいろいろ任せてもらえるので、他の工程も学んでみたいと思っています。究極的には、自分のイメージどおりの靴がつくれるようになりたいですね。
一生ものを創る仕事
日々、なかなか納得いくことはなく、正解も終わりもありませんが、試行錯誤しながら作業に取り組んでいる時にやりがいを感じます。こだわり次第で結果は変わってくるので、思い通りに仕上がった時の達成感は大きいですね。自分の手がけた靴を誰かに履いてもらえるというのは、何より嬉しいですし、手応えにつながります。革靴のいいところは、修理すれば一生履くことができる点。履き続けることで自分の足に馴染んでいきます。手仕事で一生ものを生み出せることが、いちばんの魅力だと思います。
靴作りで活躍する、道具たち
底付けで使う道具には、ハンマー、革包丁、やすり、熱ゴテなどがあります。特に熱ゴテは、コバという靴底(ソール)の側面、ソールとアッパーを縫い合わせた部分の仕上げの際に、熱したコテを当ててきれいにしたり、飾りを入れたりします。熱ゴテは自分で調整し、靴に合わせてカスタマイズします。
社名 | 有限会社パーレイ・トレイディング |
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本社所在地 | 東京都台東区今戸2-17-10 |
TEL | 03-6240-6090 |
主な業務内容 | 皮革製品の企画、輸入、製造、販売、卸 |