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経験で掴んだ感覚を、技能として磨き上げていく。 catch
#83

椅子張り

経験で掴んだ感覚を、技能として磨き上げていく。

株式会社 種沢製作所
池田 晴季さん・宿谷 夏生さん

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椅子やソファの生地の張り替えを手がける椅子張りの仕事には、熟練した技能が求められます。素材を厳選し、座り心地まで配慮した、美しい張りの仕上がり。細部へのこだわりが詰まった椅子張りの仕事について、株式会社種沢製作所の池田晴季さんと宿谷(しゅくや)夏生さんに伺いました。

椅子張りの工程とは

生地を型取りして、適切なサイズにカットし、裁断した生地のパーツを縫い合わせます。骨組みとなる木枠を組み、クッションとなるウレタン材を貼り合わせ、下ごしらえをします。下ごしらえした木枠に縫製した生地を張り、全体を組み上げ、最後に仕上げ作業を行います。

椅子張りの工程とは

ものづくりに魅せられて左:池田 晴季さん
右:宿谷 夏生さん

ものづくりに魅せられて

池田/もともとものづくりが好きで、大学は工芸学科へ進み、鋳造を学びました。でも、暮らしに身近なものを修理する仕事がしたくて、東京都が開催する職人塾で椅子張りを知り、この会社で職場体験実習に参加し、そのまま入社しました。
宿谷/工芸系の高校で家具の勉強をし、卒業後、飛騨の職業訓練校でさらに家具づくりを学び、東京の家具屋に就職しました。造作家具という据え置き型の箱物家具を手掛けていましたが、机や椅子などの脚物(あしもの)家具に興味を持つようになり、特に椅子張りの奥深さに惹かれ、自分も挑戦してみたいと思い、転職しました。

「職人塾」って何?

職人塾は、「優れた技能を持つ職人が活躍している現場の見学、職場体験実習を通じて、ものづくりのすばらしさを知り、ものづくりの世界を目指す契機とする」ことを目的とした事業で、34歳以下で、現在仕事についていない方や臨時的な職に就いている方、または、大学や高校、専門学校等に在学している方で、ものづくりに関心のある方が参加できます。

参加費用はなんと無料!*
「自分も技能を身に着けて立派な職人になりたい!でも、どんな職種があってどんなことをやっているんだろう?」と思っている若い人におすすめです。
*交通費等は自己負担。ただし、職場体験実習先に通う際の交通費は1日につき1,000円を限度に実費を支給。

職人塾レポートを見る

「職人塾」って何?

仕事の現在地

仕事の現在地

宿谷/今は、ソファや椅子の下ごしらえを担当しています。木枠にウレタン(クッション材)を取り付け、張地の張り替えができる状態にする仕事。ウレタンの形によって座り心地はもちろん、最終的な見栄えにも影響するので大事な作業です。
池田/生地の型取りを教わり、ミシンによる縫製も担当しています。先日、ソファをまるごと任され、型取りから張りまで一人で仕上げました。背もたれが丸く、全体にアールがかった大型ソファで、1枚の生地で張るか、生地を接(は)ぎ合わせるか、お客様の要望を伺いながら、最終的に自分で判断しました。難しい作業でしたが、形になった瞬間は達成感があり、自信にもなりました。

経験と怖さ

経験と怖さ

池田/最近、人が座るもの、使うものを作っているという当たり前のことに気づき、ものづくりの怖さを感じています。使う人がどう座るかわからないし、子供が飛び跳ねるかもしれない。自分の作り方次第で、その椅子がどうなるのか、どれくらい保つのかを考えると不安になります。入りたての頃は、仕事を覚えるのに必死で、納品後の使われ方まで気が回りませんでしたが、今はとても気になります。
宿谷/張り作業で生地を引っ張る際の力の加減に難しさを感じています。生地の張りは座り心地に関わることなので、ちょうどいい張り具合に仕上げなければなりませんが、力を入れすぎても弱くても、うまく張れません。感覚の世界なので、教わってできるものでもなく、経験を積んで掴む必要があります。

自分の感覚を磨く

自分の感覚を磨く

宿谷/今はとにかく、職人としての感覚を磨き、早く先輩たちに追いつきたい気持ちでいっぱいです。前職の木工では、1ミリ削れば1ミリになる、とてもわかりやすい世界でしたが、張りは、座面のどこを引くと、どう張れるのか、自分の感覚で判断しなければなりません。
池田/初めてのことばかりで、一つ一つ聞きながら作業と向き合っていますが、教わっても、すべてを吸収できるわけではありません。最終的な仕上げの判断は、自分自身。何よりもまず、自分を信じることです。経験して感覚を養い、納得できるものが作れるよう、真摯に向き合っていきたいと思います。

使う人に馴染むものとして

使う人に馴染むものとして

宿谷/完成してかたちになる瞬間、ものづくりの楽しさを感じます。座り心地が良ければ、素直に感動します。ダイニングチェアの張りを任されましたが、何度もウレタンを重ね、座り心地を確認しながら、正解を探る。その細部へのこだわりが、この仕事の魅力ではないかと思います。
池田/これまでは絵や雑貨など、鑑賞するもの、飾るものをつくってきました。でも今、扱っているのは、人が使う道具です。私の手を離れ、お客様に座ってもらって初めて、モノ自体が輝く。直すことで長く使えて、座る人に馴染んだ愛着のある椅子になっていく。だからこそ、作って終わりではなく、その先のことも考えて作らなければなりません。そこに面白さを感じます。

社名 株式会社 種沢製作所
所在地 東京都大田区矢口2-15-2
連絡先 TEL:03-5482-7002
主な業務内容 椅子・ソファーの設計及び施工業務
家具の設計及び施工業務
家具・椅子・ソファーのリフォーム業務(張替え・修理・塗装等)
ホームページ 株式会社 種沢製作所のHPへ

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