建築物を美しく飾り、耐久性に優れた建材として、古くはエジプトのピラミッド内部でも使われていたという、タイル。床や壁など、建物のさまざまな場所で利用され、高い技能によって整然と仕上げられたタイルの美しさは格別です。ウィスインテリアの伊藤俊司さんにタイル張りについて伺いました。
弟子入りし、修行
父がタイル業を営んでいたので、職業訓練校でタイル施工を学び、家業を継ぐつもりでした。しかし、訓練校の講師にタイルの名匠といわれる親方がいたので、弟子入りしたいと思い、戸建てなどの住宅現場の浴槽のタイル張りをメインとする町場のタイル工として修行を積みました。職業訓練で基礎的な技術は学んだものの、最初は現場で何もできないため、親方や職人さんの作業環境を整える段取りの手伝いからスタートしました。一緒に現場に行って材料を用意し、次はどういう作業をするのか、何がほしいのか、先読みしながら準備をします。慣れてくると作業全体の流れがわかるようになり、先回りして現場を動かせるようになります。そのうち手が空くので、張りの作業を任かされるようになり、ダメ出しされながらも、施工経験を積みました。入社3年目の時、技能五輪全国大会のタイル張り競技に出場し、金賞を受賞。壁タイルや床タイルの美観が高く評価されたことが励みとなり、その後、親方の了承を得て、2年間、フリーの職人として腕を磨き、独立しました。
技能五輪全国大会とは
技能五輪全国大会は、青年技能者(原則23歳以下)が技能を競い合う大会で、若年層の技能向上を図るとともに、広く国民に技能の重要性・必要性をアピールし、技能を尊重する機運の醸成に役立てることを目的として、毎年開催されています。
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段取りの重要性
タイル張りは、建物の内装、床、水回り、玄関、外装・外構などの仕上げ材、意匠材として美しく仕上げるのが仕事です。場所に応じたタイルの適性、工法(張り方)はさまざまなので、タイルの知識はもちろん、適正な工法を選定し、きれいに仕上げる技能も求められます。当初は、言われた通りに続けていればうまくなるものと思っていましたが、それではなかなか上達しません。上手い人は要領が良く、作業が早い。結局、段取りをしっかり組むことが重要だと気づきました。仕事が早い人、仕上がりのきれいな人のやり方を見て、効率の良い段取りを覚えながら、自分に適した方法を工夫する。大切なのは、いかに寸法を正確に取るか。段取りどおりに作業ができれば、順調に進みます。一つ一つの作業工程を的確に積み上げていくことが、スピードと仕上がりの美しさにつながります。
焼き物としての難しさ
タイルは、現場で状況を確認してサイズを決め、カットしていきます。枚数によってカットの時間は変わるので、工期によっては人手を借りて対応します。タイルは焼き物なので、若干のサイズ違いや色ムラが出ることがあり、特に海外製のタイルの場合、日本製のように品質が均一ではありません。サイズ違いや色ムラがあるから、再度同じタイルを注文しても、同一のものが届くとは限らない。そうした可能性も考慮した上で、現場で段取りを間違えず、正確にサイズと枚数を割り出すことが大事になってきます。そこは何年やっていても難しいところで、いちばん気を遣います。
整理整頓と掃除を習慣に
タイル業界の中では、まだまだ若手。現場には年配の職人さんも多く、自分よりもきれいに仕上げる人はたくさんいると思います。自分は、結果だけでなく、作業プロセスも含めて仕事と捉えているので、まず挨拶をしっかりして、お客様や周りの現場作業者と円滑なコミュニケーションを取りながら、整理整頓、掃除も大切にしています。もともと親方が丁寧な人で、掃除と整理整頓を徹底していました。修行していた頃は、「周りをきれいにしろ」といわれても、最後に掃除すればいいじゃないか、と思っていましたが、今では習慣になっています。現場で職人さんからは、「そこまでやるんだ。丁寧だね」と驚かれたり、褒められたりすることもあります。親方に倣っているだけですが、他社でそこまでするところは少なく、職人の姿勢としては意味のあることだと思っています。
次世代に継承していく
タイルは仕上げ材であり、その場所に長く残るものです。美しいタイルをきれいに張ることができた時の達成感は格別です。建物を彩る意匠としての美しさがタイルの魅力であり、自分の手がけたものが世の中に増え、お客様にも喜んでもらえる。正直、やりがいしかありません。今後は、親方のように技術と仕事のやり方を弟子に継承していきたい。独立させてくれた親方には感謝しています。親方から100%受け継いだわけではありませんが、自分なりの仕事に対する姿勢や解釈を次の世代に伝えていくことは重要なので、弟子を一人前に育ててみたいと思います。
押切とは?
タイル職人が専用で使う特徴的な道具として、通称「押切」があります。タイルカッターというダイヤモンドの刃が付いた切り台で、タイルの表面に傷をつけて押して割るタイプのもの。タイル業界ならではの道具です。
社名 | Wis Interior (ウィスインテリア) |
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本社所在地 | 東京都足立区千住大川町42-5 |
連絡先 | 03-6806-1222 |
主な業務内容 | タイル張り工事、エコカラット張り工事、左官工事、ブロック工事 |