木造建築物の新築やリフォーム、修繕工事など、住まいづくりに携わる、建築大工。設計図をもとに木材を加工し、土台、骨組み、屋根、壁や天井などの内装の下地づくりを担うとともに、現場に関わる職人をまとめ、住空間を造る仕事です。有限会社藤森工務店の三浦伸晃さんに大工の仕事について伺いました。
大工に憧れて
小さい頃からものを作るのが好きで、小学生の時、近所で新築の家を建てている現場があり、作業している大工さんを見て、「かっこいいな」と思いました。それがきっかけで生活空間をつくることに興味を持ち、大工の道を目指すようになりました。工業高校に入学し、職業体験の際にお世話になったのが藤森工務店で、いい職場だと感じたので、卒業後に就職。ここで大工としての仕事を一から学び、ちょうど10年になります。
大工一人で家は建てられない
新築をはじめ、改修や修繕など、木造建築全般を手掛けています。新築の場合、まず地盤調査・地盤改良を行い、鳶(※とび)職人にコンクリートの基礎を造ってもらいます。大工は、その上に木の土台を取り付け、上物の家を建て、屋根を造ったら、外を囲い、中の工事に入ります。設計図通りの現場というのはなかなかなく、設計者やお客様と打ち合わせをしながら進めます。大工仕事に加え、現場の工程を組み、工事期間内の段取りやスケジュール管理も担います。大工一人では家は建てられないので、地盤から始まって仕上がるまで、建築関連のさまざまな職方さんと一緒に家づくりに携わります。
※鳶:建設現場で高所作業を担う専門業。町場の建築現場では、基礎工事を担う。
家づくりを総合的に理解する
家づくりの面白さは、いろいろな分野の職人さんとコミュニケーションを取りながら、現場をまとめ上げ、完成させるところにあります。現場をまとめるには、家を一棟建てる際のさまざまな仕事について総合的に理解しておくことが必要です。見習いの頃から、時間があれば、屋根板金、防水、水道工事など、いろいろな職人仕事を手伝って、実際に自分で体験して覚えました。最初の現場で手がけたのも、大工仕事ではなく板金。屋根の葺き替えで、板金鋏(※ばんきんばさみ)と玄能(※げんのう)を持って屋根の修理をした覚えがあります。大工以外の仕事を知ることの大切さ、必要性を、この時に実感できたので、すごくいい経験になりました。
※板金鋏:薄い金属板を切るための板金用のハサミ
※玄能:鉄製の頭部の両端が打てる大工道具
木を見分ける
大工の仕事は木材を扱いますが、木は同じものが存在しません。産地の違い、育った環境や年月によって木目も変わります。寒い地方と関東の檜を比べると、全く別物の木肌をしています。脂っ気が多く、粘りのある木は、構造材や軸組みに使い、木目の揃った見た目の良い木は、窓枠のような目につくところの化粧板に使うなど、木を見分け、活かす場所を決めます。最初の頃は、木の見分け方がわからず、産地や種類を調べ、覚えていきました。木目の入り方を見極め、どこに使えば木が活きるのかを考えるのは、大工仕事ならではの面白さですが、同時に難しさでもあります。
住む人に喜んでもらうために
ひと口に大工といっても、自分のように家の修繕・工事をする大工もいれば、社寺を扱う大工、内装大工、建て方専門など、さまざまです。大切なのは、シンプルに続けること。見習いの頃は、がむしゃらにいろいろなことを身につけようとしましたが、それが今やっと、家一棟まとめ上げられる知識や技能としてつながりました。今後は、技能に磨きをかけるだけでなく、他の職人さんたちに気持ちよく作業してもらえるように、現場の環境づくりができる大工になるのが目標です。お客様に「お願いしてよかったです」と言われるのは何より嬉しいし、そのお客様の笑顔が仕事のモチベーションになっています。
鉋屑に、味の違いがある!?
大工は五感で仕事をします。木材の質を目で見て、触って確かめ、削る音で感じ、木肌の匂いで嗅ぎ分けます。鉋(※かんな)をかけている時に、削り節みたいな鉋屑を見ていて、どうしても味が気になり、食べてみたことがあります。脂を多く含む檜は、少し苦味があるのに対し、杉はあまりクセがなく、ほんのり甘い味わいでした。樹種や産地による違いが、味覚として実感できました。
※鉋(かんな):材木の表面を削って滑らかにするのに使う大工道具
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企業名 | 有限会社藤森工務店 |
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本社所在地 | 東京都調布市入間町1-12-17 |
連絡先 | 03-3308-7358 |
主な業務内容 | 木造建築を主に、新築・増改築・リフォーム工事など、住まいについての相談各種受け賜わります。
すべての現場で、プレカット(木造住宅の構造材を工場で生産する方法)を使用せず、 現場に合わせて、技能のすぐれた大工が、墨付け・加工・組み立てをしています。 |