• HOME
  • 特集記事
  • つくる楽しさを知ることーそれが、技術を高めていく第一歩。
つくる楽しさを知ることーそれが、技術を高めていく第一歩。 catch
#40

東京都優秀技能者(東京マイスター)

つくる楽しさを知ることーそれが、技術を高めていく第一歩。

東芝インフラシステムズ株式会社
井上 彰さん

東京都では、年に一度、都内に勤務する技能者の中から極めて優れた技能を持ち、かつ他の技能者の模範と認められる方々を「東京都優秀技能者(東京マイスター)」に認定、東京都知事賞を贈呈しています。 今回は、令和4年度に東京マイスターに認定された、配電盤・制御盤組立・調整工の井上彰さん(東芝インフラシステムズ株式会社)に、受賞の感想や技能向上への取り組み、ものづくりの楽しさなどについて伺いました。

仕事は選ばず、拒まず

仕事は選ばず、拒まず

これまで仕事を選ばず、いろいろやってみようという姿勢で積極的に挑戦してきたことが、今回の受賞につながったと思います。「井上なら、断らないだろう」ということで、いろいろなところから声をかけられる機会が多く、どんなに大変な仕事でも、選り好みせずに向き合ってきました。そういう経験の積み重ねによってスキルの幅が広がり、それぞれの専門領域に対する知識を深められたことで受賞できたのは、とても嬉しく思います。一方、当社には、歴代の先輩社員10数名が受賞してきた伝統があり、そのプレッシャーを感じつつ、常に先輩たちを目標に、日々切磋琢磨しながら、技能を磨ける環境があったことが大きいと感じています。

思い込みが、道を拓く

思い込みが、道を拓く

もともとプラモデルなど、モノをつくることが好きで工業高校に入りました。電子工作キットを作る授業で、ハンダ付けをしたところ、周りの生徒よりもハンダの表面をきれいに仕上げることができ、“もしかすると、自分は上手いのかも”と勝手に思い込んで、電機メーカーを志望。学校の先生から募集していることを教わり、入社したのがきっかけです。社内には、もっと上手な方はいましたが、その後、日本溶接協会からハンダ付けの技術で表彰されたことがあるので、当時の思い込みもまんざら的はずれではなかったのかもしれません。

気づき、考えて工夫する力

気づき、考えて工夫する力

製造現場では、主に上下水道や電鉄、空港、ビル、化学プラント向けの配電盤や制御盤の組立作業を行っています。配電盤の組立てはすべて受注生産で、都度、人の手で設計し、その配線図をもとに、配電ボックス内に部品、装置を取り付け、配線します。図面通りにいかないこともあり、作業しながら、“ここは、こうした方がいいのでは?”と考えながら、形にしていく能力が求められます。現場によって設置場所や配線の長さが変わるため、図面ではわからなかった不都合が生じた場合は、現場で対応します。本来は、製造後の試験部門の役割ですが、そうなると設計から見直し、製造で修正し、再度、試験をしなければなりません。現場で気づくことができれば、その場で直し、手戻りなく済みます。例えば、器具の取付け位置が高く、スイッチに手が届かないような場合、設置場所を下げる提案をし、現場で調整します。細部まで気を配りながら、おかしいところや矛盾に気づけるかどうか。そして、配線の表示の見やすさまで気を配った、仕上がりの美しさ。そこにスキルや経験の差があらわれます。

興味を持ち、楽しむ

興味を持ち、楽しむ

今は、業務改善活動や作業標準の管理、後進に向けた技能教育も担当しています。技能継承というと、同じ作業や動作を繰り返す修行のようなイメージがありますが、そういうことよりも、“なぜ、この作業をするのか”、“組み立てているものが、世の中でどう使われるのか”といった背景を考え、作業の本質を理解することが重要です。私が新人の頃は、とにかく見て覚えるというやり方でしたが、なかなかうまくいかず、悔しくて、自分でいろいろ調べるうちに、“こういう理由で、この作り方になっているんだ”という発見や気づきをきっかけに、もっと知りたいという興味を持つようになりました。昔に比べると、仕事が細分化・専門化されており、他の領域を知る機会がなかなかありませんが、なるべく視野を広くし、幅広い領域で高いレベルの技術が身につけられるよう、若い人を支援していきたいと思います。

受け継いだものを、さらに高めていく

受け継いだものを、さらに高めていく

これまで先輩たちが引退する時、“あとは頼むよ”という形で、いろいろな役割を引き継いできました。託されたからには、それを次に伝えていく責任があります。先輩から100の技能を受け継いだのに、80が合格ラインだから、それを伝えればいいというのでは、マイナス20の劣化コピーにしかなりません。受け継いだものに磨きをかけ、100以上にして受け渡していく。そのために、自分で勉強し資格を取得して、必要なスキルを身につけることで、技能の幅を広げてきました。 若いみなさんには、いろいろなことにチャレンジして、ものづくりの楽しさを知ってほしいと思います。好きこそ、ものの上手なれ、といいますが、そこから自分の才能や得意、夢中になれることを見つけていく。つくる楽しさを知ることが、技術を高めるための第一歩になると思います。

企業名 東芝インフラシステムズ株式会社  (府中事業所)
所在地 神奈川県川崎市幸区堀川町72番地34  (東京都府中市東芝町1)
主な業務内容 社会インフラ事業関連の製品・システムの開発・製造・販売・サービス
ホームページ 東芝インフラシステムズ株式会社のHPへ

#バックナンバー

左官技能の日本一を競う、最終決戦#110

左官技能の日本一を競う、最終決戦

鏝(コテ)を使って、漆喰や土、モルタル(セメントと砂と水を混ぜ合わせた建築材料)などを建物の壁や塀、床などに塗り上げる職人「左官」。その左官技能の向上と次世代への継承を目的とした「第50回全国左官技能…

詳しくはこちら

日々、技と向き合う楽しさに、 心から喜びを感じて#109

日々、技と向き合う楽しさに、 心から喜びを感じて

奈良・平安時代に仏教と共に伝わったとされる、表具。糊と刷毛を使って、和紙や裂地(きれじ)を張り、加湿と乾燥の加減をみながら、掛軸や屏風、襖(ふすま)、障子(しょうじ)などを仕立てる繊細な仕事です。表具…

詳しくはこちら

匠の技と最先端のものづくり技術の今を体感!(後編)#108

匠の技と最先端のものづくり技術の今を体感!(後編)

ものづくりの伝統的な匠の技と最先端技術が集まる一大イベント「ものづくり匠の技の祭典2025」。今回は、大勢の参加者で賑わった出展ブースの様子をレポートするね。どのブースも、趣向を凝らした体験プログラム…

詳しくはこちら

匠の技と最先端のものづくり技術の今を体感!(中編)#107

匠の技と最先端のものづくり技術の今を体感!(中編)

日本のものづくりを支えてきた伝統的な匠の技と最先端のものづくり技術が集結した、「ものづくり匠の技の祭典2025」。今回は、さまざまな分野の匠たちが実演を通じて卓越した技を披露したスペシャルステージの様…

詳しくはこちら

匠の技と最先端のものづくり技術の今を体感!(前編)#106

匠の技と最先端のものづくり技術の今を体感!(前編)

2025年7月25日(金)〜27日(日)の3日間、東京都立産業貿易センター浜松町館で、「ものづくり匠の技の祭典2025」が開催されたよ。10回目を迎えた今回、10周年を記念する特別作品として、祭典を象…

詳しくはこちら

中国料理の奥深さに魅せられて#105

中国料理の奥深さに魅せられて

数千年に及ぶ歴史とともに、それぞれの地域の気候や風土、食材、調理法に応じて多様な食文化を育んできた、中国料理。大きく北京料理、上海料理、四川料理、広東料理の4大流派に発展し、日本人にとっても身近な食と…

詳しくはこちら

自らの手と感覚で掴んでいく、高精度の接合技術。#104

自らの手と感覚で掴んでいく、高精度の接合技術。

熱や圧力で金属を接合する技術―溶接。鉄やステンレス、アルミなどを高い強度と剛性で接合できることから、金属加工における重要な技術として、幅広い分野の製品、部品の製造に利用されています。溶接を手がけている…

詳しくはこちら

クライアントの課題解決に向け、 ベストのデザインを導き出す。#103

クライアントの課題解決に向け、 ベストのデザインを導き出す。

パンフレットや広告、出版物などの印刷媒体をはじめ、ロゴマークやシンボルマーク、商品パッケージ、Webサイトなどを対象に、写真や文字、イラスト、色彩などの視覚要素の配置や組み合わせを工夫し、メッセージや…

詳しくはこちら
  • はたらくネット
  • ものづくり・匠の技の祭典2025
  • 東京マイスター
  • 技のとびら
  • 東京都職業能力開発協会
  • 中央職業能力開発協会
TOPに戻る
TOPに戻る2