• HOME
  • 特集記事
  • エレベーターの押しボタンは、こうして作られる!(島田電機製作所)
エレベーターの押しボタンは、こうして作られる!(島田電機製作所) catch
#65

エレベーターボタン製造

エレベーターの押しボタンは、こうして作られる!(島田電機製作所)

リポーター
ものづくり部 部長 わざねこ

動画を見る

私たちが普段、何気なく利用しているエレベーターは、社会生活に欠かせないインフラであり、ビルやマンションなどの建物空間を快適に移動する手段として大切な役割を果たしているよ。エレベーター用意匠器具の専門メーカーとして、1933年の創業以来、押しボタンや到着灯、表示灯などの製造を手掛けてきた島田電機製作所さんを訪ね、エレベーターの押しボタンの製造現場を見学してきたので、わざねこがリポートするね。

エレベーターの意匠器具製造、ひと筋

エレベーターの意匠器具製造、ひと筋

創業以来、90年にわたり、エレベーター関連の意匠器具製造において高い専門性を磨いてきた、島田電機製作所さん。手がけているのは標準品ではなく、オフィスビルやホテル、商業施設、複合施設などのオーダーエレベーターに使われる特注品が主なんだ。建物ごとに異なるデザイン・設計によって製作されるものだから、デザイン性と機能性を熟知したオーダーメイドなものづくりで、社内3部門8グループで一貫生産しているのが特徴。営業技術部がお客様からの依頼をメーカー経由で受け、設計部が提供されたデザイン画を基に設計図面を引き、製造部が板金、アクリル部品の製造、組立、検査、納品まで、各工程間で連携しながら、ワンストップによる効率的なものづくりをしているよ。一貫生産することで、工程間のロスを削減し、設計構造を工夫してコストを抑え、社員が主体的に改善活動に取り組みながら、品質向上、超短納期も可能にしているんだ。では、実際の作業工程を見てみよう。

ボタンを作るノコ盤をカットしている様子(左上の写真)
バフ研磨している様子(右上の写真)
研磨前>研磨中>研磨後(下の写真)

ボタンを作る

ボタンとなるアクリル部分の製造工程では、アクリル材料を大まかにノコ盤でカットし、マシニングセンタで細かく削っていくよ。形状に合わせて刃物を選定し、回転数や速度、加工手順など最適の方法で加工していくんだ。削った時についた刃物の跡は、表面にペーパーをかけてきれいにし、さらに透明度の高い面に仕上げるため、高速で回転するホイール状の布(バフ)に軽く押し当てながら磨き上げるバフ研磨を行うよ。全体を均一に仕上げるには、繊細な力加減が必要で、経験が求められる難しい作業なんだ。

操作盤を加工するレーザー加工の様子(上の写真)
ベンダー(曲げ)加工の様子(左下の写真)
溶接の様子(右下の写真)

操作盤を加工する

操作盤に使われるステンレスや鋼板などの板材は、光の熱エネルギーで、ボタンや数字など、指定の形に切り抜くレーザー加工をするよ。熱で変形しないように切り抜くには、ノウハウが必要なんだ。その後は、曲げ加工機で指定の角度に板材を曲げるベンダー(曲げ)加工をするよ。角度や全体の形状、材質の厚みなどに応じて加工し、複数の曲げがある場合は、どこから曲げるか、その順番も重要なんだ。ステンレスを加工する際は、表面に曲げキズが出ないよう注意が必要だよ。曲げの後は、板材にスタッドというボルトを溶接するよ。このスタッド溶接作業は、材料とスタッドの間に電圧をかけて溶接する方法で、スタッドの太さや材料の厚さに応じて電圧を決めるんだ。


塗装・組立・最終検査塗装の様子(左の写真)
組立の様子(右の写真)

塗装・組立・最終検査

次は、アクリル材と板材の塗装だよ。アクリル材は、光の反射効率を上げるため白塗装を施し、デザイン部品の光漏れを防ぐための白+グレーの2重塗装をし、板材の板金塗装では、さび止めのためのグレー塗装をするんだ。乾燥したら、いよいよアクリル材と板材の部品の組み立て。組立作業は、ボタンなどのデザイン部品と操作盤の電気部品に分かれていて、この作業を経て完成品になるんだ。最終検査では、お客様の要望や社の品質基準を満たしているか、しっかりチェックするよ。デザイン性が求められる製品なので、キズ、ムラ、ズレ、ソリ、ユガミはないかの確認はとても大切。 最後に寸法、通電を確認して、検査終了。

建築物のコンセプトが形に表れる

建築物のコンセプトが形に表れる

こうして製造されるボタンや表示灯などは、それが組み込まれるビルや建物のコンセプトに基づいてデザインが決まるんだ。だから、最終的に組み込まれて初めて、完成した建築物とともに、コンセプトが目に見える形になるんだ。それを目にした瞬間、“なるほど!だからこういうデザインだったのか!”とわかるんだって。エレベーターのボタンや表示灯のデザインというのは、時代の流れが表れるもの。その変遷をたどれば、世の中の変化や時代性が見えて、とても面白いよ。建築物というスケールの大きいものに携わることができるところも、この仕事の魅力だね。

どのボタンが、いちばん劣化する?

エレベーターを呼ぶ押しボタンは「ホールボタン」といい、ボタンの形状には丸型・角型があり、表示される矢印、数字、マークなどの書体は自由に選べるんだって。エレベーター内の操作パネルには、階数を表す数字が並んでいるけど、操作パネルのボタンで最も劣化が激しいのは、なんだと思う?実は、「閉まる」ボタンなんだって!みんな、知ってた?

どのボタンが、いちばん劣化する?

普段、何気なく押しているエレベーターのボタンだけど、たくさんの種類があって、いろいろな工程を経て作られていて、しかも、そこにはさまざまな工夫や技術、ものづくりへの想いが込められているんだね。
社名 株式会社 島田電機製作所
本社所在地 東京都八王子市大和田町3-11-1
TEL 042-656-1401
主な業務内容 エレベーター用意匠器具を中心としたオーダーメイドのモノづくり企業
ホームページ 株式会社 島田電機製作所のホームページへ

#動画で見る

#バックナンバー

タイルの美と機能を引き出す、熟練の技。#88

タイルの美と機能を引き出す、熟練の技。

建築物を美しく飾り、耐久性に優れた建材として、古くはエジプトのピラミッド内部でも使われていたという、タイル。床や壁など、建物のさまざまな場所で利用され、高い技能によって整然と仕上げられたタイルの美しさ…

詳しくはこちら

多彩な職業訓練をプチ体験できる情報発信拠点、誕生!#87

多彩な職業訓練をプチ体験できる情報発信拠点、誕生!

2024年7月、東京都立中央・城北職業能力開発センター しごとセンター校内(東京しごとセンター10F/11F/12F)のロビーエリアに、キャリア・コンパス・センターが新たにオープンしたよ。都立職業能力…

詳しくはこちら

人の手が生み出す板金の美しさに魅せられて。#86

人の手が生み出す板金の美しさに魅せられて。

屋根や雨樋などの板金部材を手がける、建築板金。薄い金属の板に、切る・折る・叩く・曲げるといった加工を施すことで美しさと機能を実現します。板金の仕事について、有限会社岩井板金工業所の岡林瑞さんに伺いまし…

詳しくはこちら

一針一針の手仕事に、こだわりを込めて。#85

一針一針の手仕事に、こだわりを込めて。

反物から着物を仕立てる伝統的な技能、和裁。丁寧な手仕事を積み重ねる仕立てやお直しの作業は、日本の着物文化を担う重要な仕事でもあります。和裁の仕事について、仕立 幸村の片山聡美さんにお話を伺いました。 …

詳しくはこちら

贈る人の思いを汲みながら、花でイメージを描く。#84

贈る人の思いを汲みながら、花でイメージを描く。

アレンジメントや花束、ブーケなどの製作、結婚式やパーティー、葬儀場の飾り付けなど、花を飾る仕事、フラワー装飾。種々の花と色どりの組み合わせで、思い描くイメージどおりに飾り付けていくフラワー装飾の仕事に…

詳しくはこちら

経験で掴んだ感覚を、技能として磨き上げていく。#83

経験で掴んだ感覚を、技能として磨き上げていく。

椅子やソファの生地の張り替えを手がける椅子張りの仕事には、熟練した技能が求められます。素材を厳選し、座り心地まで配慮した、美しい張りの仕上がり。細部へのこだわりが詰まった椅子張りの仕事について、株式会…

詳しくはこちら

コンクリート建築の要となる躯体づくりを担う、型枠のスペシャリスト#82

コンクリート建築の要となる躯体づくりを担う、型枠のスペシャリスト

街に建ち並ぶ、さまざまなビルやマンション。こうした鉄筋コンクリート製の建造物を建てる際に欠かせないのが型枠です。 建築現場でこの型枠を精巧につくり、組み立てる、型枠大工の仕事について、株式会社村井工務…

詳しくはこちら

先はまだまだ見えない。奥深き、硝子の世界。#81

先はまだまだ見えない。奥深き、硝子の世界。

江戸時代に生まれた硝子製法を受け継ぎ、手作業で一つ一つ生み出される硝子製品「江戸硝子」。1,400℃にも及ぶ高温で溶かされたガラスを鉄製の棹(さお)で巻き取り、「吹き」「押し」「延ばし」などの技法を用…

詳しくはこちら
  • はたらくネット
  • ものづくり・匠と技の祭典2023
  • 東京マイスター
  • 技のとびら
  • 東京都職業能力開発協会
  • 中央職業能力開発協会
TOPに戻る
TOPに戻る2