プラスチック材料を加熱して溶かし、金型に流し込んで部品を成形する、プラスチック成形。産業機器や工作機械、医療機器など、社会を支える重要な分野で利用されているさまざまなプラスチック部品を手がける有限会社今岡モールディングの相澤史明さんにお話を伺いました。
プラスチック成形とは?
昭和20〜30年代にプラスチック成形が国内に入ってきた時は、熱硬化性(加熱して固める)が主流でした。しかし、化学反応を起こして固めるのに時間がかかるため、大量生産に向かないことから、金型に流し込んで冷やすだけで取り出せる熱可塑性(冷まして固める)のプラスチックに切り替わっていきました。すべて熱可塑性に置き換わるといわれましたが、熱硬化性プラスチックは、熱を加えても溶けない特性を活かし、鉄道の信号線をつなぐコネクタ、温度変化の激しい宇宙空間で使用するロケットや人工衛星のコネクタ、発電所の制御盤に使われるコネクタなど、高い安全性と長期にわたる耐久性が求められるインフラ周りや人の命に関わるところで利用されています。
一体化させたコネクタ部品
プラスチックに親しみを感じて
子供の頃から飛行機やクルマのプラモデルを作るのが好きで、金型やプラスチックの成形に親しみを感じていたことから、金型の設計・製造とプラスチック成形の両方を手がける会社なら、長く仕事を続けられると考え、入社を決めました。大学は工学系でしたが、金型に関する知識はなく、初心者として仕上げ工程の手伝いから始め、プラスチック成形について基礎から学びました。
加熱で化学反応を起こす
プラスチックには、熱可塑性と熱硬化性の2種類があります。ABS樹脂やポリエチレン、ポリプロピレン等の熱可塑性プラスチックは、ペットボトルやビニール袋などに使われており、熱を加えると溶けるため、再生可能です。一方、熱硬化性のプラスチックは、熱を加えると多少柔らかくはなるものの、溶けないので再利用はできませんが、強度と熱に強い特性を活かし、高い安全性が求められる電気器具や配電盤、自動車部品、医療機器、電気絶縁材料などで利用されています。私が今、担当しているのは、熱硬化性プラスチックを加熱して化学反応を起こして固めるインサート成形で、工作機械や通信機器、鉄道などで使われるコネクタ部品など、30~40アイテムを手がけています。
温度管理が重要
当初は、手順を覚えて作業ができるようになるのか不安でした。作業工程はすべて手動。粉末状の材料を上皿天秤で正確に測り、金型を熱板にセットして、材料を流し込んで成形します。熱を加えて材料を溶かし、化学反応によって固めるので、3分程かかりますが、熱硬化性プラスチックは、材料の製造時期やロットによってばらつきがあり、加熱時の温度管理が重要になります。古い材料だと、溶かした時の流れが悪くなることがあるので、溶け方を見極め、加熱時間や金型温度、ガス抜き時間を調整します。
繊細な作業
作業の際は、機械や製品の状態をよく見るよう心がけています。一定のサイクルでテンポ良く作業を進めていれば、加熱温度はそれほど変化しませんが、季節によって朝の時間帯などは気温が低いため、金型の温度が下がり、同じ条件で成形しても、材料がうまく流れず、穴ができる、凹む、あるいは膨らむといった現象が起きることがあります。繊細な作業なので、何が起きるかは成形してみないとわかりませんが、現象が起きた時の条件はしっかり記録し、対処法と併せて、次の作業に活かし、品質の安定に役立てています。
暮らしに欠かせないもの
温度や機械のコンディション、材料の状態によって仕上がりが変化するだけに、お客様から要求された品質の範囲内にきっちり収めることができた時は手応えを感じます。プラスチックは私たちの暮らしに欠かせないものであり、プラスチック成形は、目に見えないところで世の中を支える仕事です。自分の手がける成形部品がどのようなところで使われているものなのか、その用途と役割を知っておくことで、不良がどのような危険を引き起こすのか、不良を防ぐために何をすべきか、何に注意すればいいのかがしっかり理解でき、品質の安定にもつながります。目につかなくても、世の中を支える重要な役割を持った部品であるという意識と自覚を持って、日々、ものづくりに取り組んでいます。
ノートは、すべてを知っている
作業中に気づいたことはすべて、このノートにメモしています。加熱時の材料の流れ方が変わった時は、条件や気がついたことを必ずメモします。今は新人が入ってきたので、彼らが迷わず作業できるよう、製品の状態を写真に撮って、作業状況や対応策の手順を明確に説明し、自分のこれまでの経験と併せて共有しています。
社名 | 有限会社今岡モールディング |
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本社所在地 | 東京都大田区下丸子1-8-12 |
TEL | 03-3756-5566 |
主な業務内容 | ・熱可塑性、熱硬化性プラスチック成形 ・上記金型及び冶工具設計製作 |
ホームページ | 有限会社今岡モールディングのホームページへ |