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同世代の海外選手と競い合い、刺激を受けた4日間。 catch
#95

第47回技能五輪国際大会(貴金属装身具)

同世代の海外選手と競い合い、刺激を受けた4日間。

学校法人水野学園
専門学校ヒコ・みづのジュエリーカレッジ
福島 大志さん

2024年9月にフランスのリヨンで開催された「第47回 技能五輪国際大会」貴金属装身具職種で、学校法人水野学園 専門学校ヒコ・みづのジュエリーカレッジの福島大志さんが銅メダルを獲得しました。ジュエリー製作を競う同競技で日本代表選手が銅メダル以上を獲得したのは、2011年のロンドン大会以来の快挙とのこと。受賞の感想や競技の様子、印象的なエピソードなどについて伺いました。

技能五輪国際大会とは

技能五輪国際大会(WorldSkills Competition)は、原則2年に1度、世界各国・地域の予選を勝ち抜いた選手が一堂に会し、卓越した技能を競う競技大会です。参加各国の職業訓練の振興と青年技能者の国際交流を目的として、1950年に第1回大会を開催、日本は1962年から参加しています。また、1970年に東京、1985年に大阪、2007年に静岡で開催され、2028年には日本・愛知での開催が予定されています。

技能五輪国際大会とは

憧れて挑んだ大会

憧れて挑んだ大会

2023年の技能五輪全国大会(日本の国内大会)で金メダルを獲得し、国際大会の出場選手として選ばれたので、全国⼤会の練習期間も含めると、約2年半にわたって準備を進めました。もともと大会で活躍されている先輩方の姿に憧れ、自分の力がどれだけ通用するのか試してみたいという気持ちがあったので、国際的な舞台で銅メダルという結果を出すことができてとても嬉しく思います。同時に、指導員の先⽣⽅や卒業生の⽅など、さまざまなサポートを受けて臨んだ大会だったので、お世話になった方々に良い報告ができて安堵しています。

トラブルと緊張を乗り越えて大会競技中の様子

トラブルと緊張を乗り越えて

国際大会では競技課題が当日に発表されるため、会場での判断力と対応力が問われます。持ち込める工具に制限があり、競技者全員がほぼ同じ道具で競うため、基礎的な技能が試されます。今回、提示された競技課題は予想外の形状だったため、最初はかなり動揺しました。競技エリアの周囲には多くの観客がいて、話しかけられたりするので緊張しましたが、開始後は調⼦を取り戻し、作業に集中できました。途中、火を使う作業で空調の風が当たって作業ができなくなるトラブルに見舞われ、審査員に申し出て空調を止めてもらいましたが、このアクシデントでペースを乱され、何が起こるかわからない本番の過酷さを痛感しました。

時間との闘い

時間との闘い

競技は、4日間22時間にわたります。支給されたK18地金を使って、図面の指定寸法で材料を切り出し、やすりがけやろう付、表面の仕上げなど、すべて手作業で進めます。1〜3日目はそれぞれ指定のパーツを作る課題で、4日目に、それらのパーツを一つに組み上げ、完成させる流れになります。競技では正確さ、仕上げの美しさ、丁寧さが評価されますが、3日目は、オリジナルのデザインでパーツを作る課題のため、全体のバランスや統一感を考慮しつつ、評価で加点が得られるよう、より複雑に見せる独自のデザインを工夫しました。競技時間は、1日目と2日目がそれぞれ6時間半、3日目が5時間、4日目は4時間と決められていますが、今年は課題のボリュームがあったことから、例年6時間だった1日目と2日目の競技時間が長くなり、体力的には厳しい試合でした。

国際大会に向けた準備

国際大会に向けた準備

国際大会では、課題が当日までわからないため、対策として、過去の課題図面を初見で作る練習を繰り返し、実践的な対応力を磨きました。道具についても、ヤスリとやっとこ(※)、糸鋸のフレームは、使い慣れた自分のものを持ち込めますが、それ以外は、現地で用意されたものを使わなければなりません。日本仕様と違う道具類は事前に調べ、それに近いもので練習し、大会初日は多少やりにくさを感じたものの、次第に慣れたので支障なく作業できました。事前準備として、どんな道具でも使いこなせるようにしておくことは有効かもしれません。練習を通じて、作りの精度、美しさ、時間を意識しながら製作する総合的な能⼒が身についたように思います。練習は基本的に1⼈なので、孤独を感じることもありましたが、周りの友⼈に⽀えられて乗り越えることができました。⽬標に向けてひたむきに努⼒する精神的な粘り強さも身についたように感じます。
※やっとこ:アクセサリーパーツのピン先を曲げるのに使用する鉄製の道具。

海外選手の作品が、刺激に

海外選手の作品が、刺激に

競技期間中は、他の職種の日本選手と同じホテルだったので、夜はロビーに集まって、みんなで励まし合いながら、翌日の課題対策に一緒に取り組むのが、精神的支えやモチベーションの維持につながりました。競技終了後は、同世代の海外選手と身振り手振りを交えてお互いの作品を讃え合ったり、苦労した点を話したり、SNSの連絡先を交換したり、国境を越えた交流ができました。海外選手の作品は、自分では思いつかないような稼働の仕組みを取り入れたり、ユニークなデザインだったり、生まれ育った環境や文化がデザインに大きく影響しているのを実感し、とても刺激になりました。

ジュエリーの輝きを追い求めて福島さん技能五輪国際大会作品

ジュエリーの輝きを追い求めて

ジュエリーの魅⼒は、装飾品としての美しさはもちろん、⾝につける⼈の雰囲気やファッションと融合することで、より⼀層輝くところにあります。作りの精度はもちろん、⾝につけた時の美しさ、肌馴染みなど、ジュエリーにとっての大切な要素を総合的に意識しながら製作できる職⼈を目指し、技術を磨いていきたいと思います。

学校法人水野学園 専門学校ヒコ・みづのジュエリーカレッジ

ジュエリー分野にフォーカスした日本初の学校法人として認可を受けた専門学校。ジュエリー、バッグ、ウォッチ、シューズの各分野に特化したものづくりの技術修得を目指す。

学校名 学校法人水野学園 専門学校ヒコ・みづのジュエリーカレッジ
所在地 東京都渋谷区神宮前5-29-2
連絡先 TEL:03-3499-0300
ホームページ 学校法人水野学園 専門学校ヒコ・みづのジュエリーカレッジのHPへ

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