自動車のボディについたキズや凹みを修復し、元の状態に再塗装し、美しく仕上げる専門的な仕事が自動車塗装です。伊倉鈑金塗装工業の那須龍磨さんと野本ゆうきさんにお話を伺いました。
左:野本 ゆうきさん
右:那須 龍磨さん
板金と塗装で、自動車の外装を修理
那須/「車にキズをつけてしまった」「事故を起こして保険修理したい」そういう場合に、キズや凹みをきれいに修復する自動車の外装修理は、主に「板金」と「塗装」の2つの工程に分かれています。当社では、キズや凹みを直す板金担当と塗装担当に加え、塗装作業に入る前の下地作業、修理完了後、車をお客様にお戻しする前にきれいにする洗車・掃除担当に分かれています。具体的な工程としては、まずお客様の車の状態を拝見して修理費用を見積り、ご了承いただければ、車をお預かりします。まず外装の凹みを直す板金作業を行い、下地の仕上がりを確認してから、塗装作業に取り掛かります。塗装後は、磨き作業で塗装面をきれいに磨き上げます。当社では、洗車・清掃作業に重きを置いており、仕上げの1工程としてしっかり行った上で、お客様にお返しします。
車に慣れるのが第一歩
野本/もともと車とバイクが好きで、自動車関係の仕事がしたくて、職業訓練校の塗装科で学びました。卒業後、塗装担当希望で入社し、最初の5年ほどは、洗車や塗装の補佐。その後、塗装部門に配属され、塗装と下地を担当し、13年目になります。
那須/高校卒業後、進学を予定していましたが、家庭の事情で進めなくなり、ガソリンスタンドでバイトをしていました。お客様から板金塗装の話を聞いて興味を持ち、手に職をつけたいと思い、ネットで探したのがきっかけです。最初の5〜6年は洗車と車の移動を担当、その後、現場に入り、今はお客様対応をメインに担当し、18年目になります。当社は国産車から海外の高級車まで幅広く扱うので、未経験の場合は、まず車に慣れるのが第一歩。お客様の大切な車を預かり、きれいにしてお戻しするという会社の基本姿勢を覚える意味でも、洗車の担当からスタートします。
時間とクオリティと着地点
野本/限られた時間で、どこまでクオリティを追求するか、時間との勝負です。そこがいちばん難しいし、日々模索しているところです。思い通りに塗り上がって、最後に表面の光沢感を出すクリア塗装をして、きれいに仕上がった時は、その場でしばらく眺めます。塗装し終わった瞬間の達成感がいちばんのやりがいです。
那須/予算や仕上がりを含め、限られた時間でお客様の希望にどう応えるか。一方、会社のメンバーにも自分の時間がちゃんと持てるよう仕事を配分する。そのバランスを取るため、現場の状況と作業進行を考慮しながら、お客様に満足してもらえる着地点を見出すよう心がけています。
車と心をケア
那須/来店時は、皆さん、悲しい顔をしています。車をぶつけてしまい、ご主人に内緒で直したいというケースもあり、作業に2週間くらいかかるので、その間にちゃんと話した方が良いと思いますと助言したら、後々、感謝されたこともあります。車の修理だけでなく、そういうお客様との関わりの中で役に立てている実感があると、やりがいを感じます。いちばんは、お客様に喜んでもらえることです。
野本/お客様にとって財産である大切なクルマが傷ついて、気持ちが落ち込んでいるところで仕事を引き受けるのが、私たちです。なので、作業を終えて車をお戻しする時に、その凹んだ気持ちがほぐれて、少しでも気持ちよく帰っていただくことができれば、何よりです。そう願いつつ、日々仕事と向き合っています。
成長に終わりはない
野本/塗装の世界にはまだまだ上がいて、海外のYouTubeなどを見ていると、使う道具は同じでも、塗り方、仕上げが全く違って、もはやアートの世界です。追求していくと終わりがない。手を使うこと、ものづくりが好きな人にとっては、やりがいのある仕事だと思います。
那須/凹みを直す板金も、素材や状況に応じて道具を使い分けなければならないし、同じぶつけ方をしても、同じキズがつくことはありません。全てのケースが異なり、同じものは一つとしてない。その意味では、毎回が初めて。アプローチの仕方をいろいろ経験していないと、適切な判断、的確な作業ができません。経験が重要です。過去に修理したお客様が数年ぶりにいらして、古いキズを見て、なんか下手だなと思って履歴を調べたら、自分の作業だったこともあります。でも、できなかったことができるようになり、そこに自分の成長の跡を実感できる、そういうやりがいのある仕事だと思います。
下地や表面の歪みは、利き手以外で確かめる
下地や表面の歪みは、素手で触って確かめるそうですが、その時は、左手(利き手以外の手)を使うという話を聞きました。日常的に使う利き手は、いろいろなことに触感が慣れているのに対し、使ってない手は敏感で、違和感に気づきやすいからとの説明でしたが、単純にどっちでも同じという人もいて、正解はわかりません。いずれにしても、経験の積み重ねによって感覚が研ぎ澄まされ、それをなるべく言語化して伝えることで、技能や知識の共有を図っているそうです。
| 企業名 | 有限会社伊倉鈑金塗装工業 |
|---|---|
| 所在地 | 東京都目黒区下目黒3丁目8−7 |
| 連絡先 | TEL: 03-3713-7520 |
| ホームページ | 有限会社伊倉鈑金塗装工業のHPへ |
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