石材施工は、建築・土木工事をはじめ、お墓や石碑、石垣、花壇など、暮らしの身近なところで使われる石材の加工やその設置工事を行う仕事です。工具を使って手作業による石材加工を手がける有限会社協和石材工業所の笹本昇次郎さんにお話を伺いました。
手加工の魅力に惹かれて
うちは4代続く石材店で、大学時代、アルバイト程度の手伝いはしていましたが、卒業後は食品会社に就職し、営業の仕事をしていました。父から戻ってきてほしいといわれたのを機に家業を継ぎ、機械加工を手掛けていましたが、父が亡くなった時、競争の激しい世界で差別化を図るにはどうすればいいか、迷っていました。そんな時、石材の産地で有名な愛知県岡崎市の専門学校を見学し、手加工の魅力を知り、学びたいと思いました。岡崎まで来るのは大変だからという先生の助言で、技能グランプリで優勝経験のある稲田圭二郎さんをご紹介いただき、師匠として師事し、一から手ほどきを受けたのが手加工にのめり込んだきっかけです。
手加工の味わい
手加工を教わって約10年になりますが、まだまだです。手加工は、自らの手と身体を使って石を削ります。石材は産地によってさまざまですが、私は福島県産の「白河(しらかわ)石」を使い、「カロート」と呼ばれる遺骨を収める納骨室をはじめ、卒塔婆を立てかけるための塔婆立て(とうばたて)の土台や墓誌の台などを手掛けています。白河石は中硬石のため、加工しやすく、表面を片刃という道具で刻み目をつけ、石をしめる「小叩き仕上げ」など、手加工ならではの味わいが表現でき、経年変化で石に苔が乗り、風合いが出てくるところに魅力があります。同じ石でも、切り出す場所によって硬さや粘りは千差万別で、その違いを見極め、慎重に扱いながら加工しないと簡単に欠けてしまいます。失敗が許されない怖さは、常に心に刻みながら仕事に取り組んでいます。
祖父の仕事を、受け継いでいく
手加工でよく使う道具としては「サシ刃」があります。加工に応じて先端の刃を付け替え、石に合わせて研ぎ方も変えます。道具の使い方や研ぎ方のコツは、失敗を重ねながら身につけ、身体で覚えます。父は機械加工で御影石を扱っていましたが、祖父の代までは手加工で、当時の道具も残っており、それを使うこともあります。私が生まれた時には、もう祖父はいなかったので、仕事ぶりを直接見たことはありません。でも、祖父の手がけた作品は今も残っているので、その域に近づくため、恥じない仕事をしなければと思っています。
失敗から学んでいく
20代半ばから手加工を始めたので、この業界では遅いスタートです。規定の寸法からはみ出して削ってしまったり、欠けてしまったり、いろいろ失敗もしており、まだまだ経験不足です。失敗を次につなげていくためには、そこから何を吸収するかが重要になります。毎回、自分にできることをすべて出し切るよう心がけ、常にお客様の期待に応えられる石工になりたいと思い、仕事に取り組んでいます。1級石材施工技能士になった時、師匠から「まだスタートラインに立ったばかり。これからが大事」と言われた言葉は、常に胸に刻んでいます。
石と全力で向き合う
自分の手がけた石材が時を経て周りの石と同化し、同じような佇まいとなって、その場に馴染んでいる様子を目にすると、自分の仕事も悪くないなと少し嬉しくなります。お墓は、家族や先祖など、大切な人のために建てるもの。時を超え、世代を超えて長く残るという意味では、とてもやりがいのある仕事だと思います。四角い石を自分の力と技術で削り、加工していくところに面白さを感じますが、まだまだ若輩者なので、石と全力で向き合うことだけに集中しています。もっと経験を積んで技術を磨けば、加工できるものは増えていくと思います。直線的なものだけではなく、丸みのある五輪塔なども手がけられるよう、技術の向上に精進していきたいと思います。
道具は、自らの拠り所
使っている道具はほぼ全て師匠に選んでもらったもので、肢の部分に師匠の屋号の焼印があります。焼印は弟子の証で、仕事と向き合う際の自らの拠り所でもあります。父や祖父の道具も使いますが、代々受け継がれてきた道具を手にすると、4代続く石屋としてのつながりを実感します。
社名 | 有限会社 協和石材工業所 |
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本社所在地 | 東京都世田谷区宮坂1-40-11 |
TEL | 03-3429-4385 |
主な業務内容 | 石材関連全般 石材加工 |
ホームページ | 有限会社協和石材工業所のホームページへ |